2018年9月22日(土)

クアルコム、止まらぬ受難 NXP買収に暗雲

2018/4/20 4:18
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 【シリコンバレー=佐藤浩実】米クアルコムが再び逆風にさらされている。米中の通商摩擦により、同社によるオランダ車載半導体大手の買収に中国が難色を示しているためだ。クアルコムは19日、中国当局の要請で買収承認を申請し直したと公表。7月までに進展がなければM&A(合併・買収)で自動車分野に参入するというもくろみは崩れる。敵対的買収の標的だった1カ月前は救いとなった米中の攻防が、今度は刃として自身に突き刺さる。

 中国商務省の報道官が買収承認に対して慎重な発言をしたことに追随するかたちで、19日に申請書類の再提出を公表した。クアルコムと買収予定のNXPセミコンダクターズは、当初4月25日としていた買収期限を7月25日へと3カ月延長し、事態の推移を見守ることになる。

 クアルコムとNXPは16年10月に買収で基本合意した。買収額は440億ドル(約4兆7200億円)と、クアルコムの歴史のなかで最大のM&Aだ。スマートフォン市場が年15億台規模で飽和し、スマホ大手がプロセッサーの内製化を進めるなかで、「つながる機器」の主役になりつつある自動車分野に入り込むための決断だった。

 時を前後して、インテルが画像解析に強いイスラエルの半導体メーカー、モービルアイを買収。ひと昔前はゲーム用の画像処理半導体メーカーにすぎなかったエヌビディアも、人工知能(AI)をフックに自動運転の研究開発現場に続々と入り始めた。競合相手が自動車分野での存在感を高めるなかで、スマホ関連に依存するクアルコムにとってNXP買収は逃せないチャンスだった。

 もちろん、欧州の自動車産業との関係が深いNXPの買収審査にはある程度の時間がかかることは想定されていた。欧州委員会が買収を承認したのは今年1月。近距離無線通信の技術など、競争上の不利益が予想される事業の切り出しを約束してなんとか承認にこじつけた。この頃、クアルコムの社内には「難関だった欧州委が許可したことで、最後に残る中国の審査も前進するだろう」との楽観論があった。

 ただ、実際の審査を待っている間に現実はいっそう複雑になった。米政府は3月に通信用半導体大手のブロードコムに対してクアルコムへの敵対的買収を取り下げるよう命令したが、この時に掲げたのが次世代通信規格「5G」をめぐる中国との競争に不利になるとの理由だった。4月には米企業に対し、中国の通信インフラ機器大手ZTEとの取引を禁止。この措置への報復として、クアルコムがやり玉に挙がった。

 クアルコムのスティーブ・モレンコフ最高経営責任者(CEO)は敵対的買収を仕掛けられていた時に再三にわたり「NXPの買収成立が長期での成長をけん引する」と株主に訴えてきた。ただ、もはや数値目標に織り込むべきでないほどに不確実性は増している。クアルコムは19日の発表で、米東部時間の7月25日午後11時59分までに承認が得られない場合はNXPに20億ドルの違約金を払うとした。

 こうした状況で企業ができることは限られる。クアルコムは19日までに1月に公表した10億ドルのコスト削減計画の一環として米国で、レイオフ(一時解雇)をすることを認めた。カリフォルニア州の行政当局によれば、人数は本社のあるサンディエゴとサンノゼを合わせて1500人に上る。クアルコムの広報担当者は「当初は人には手を付けないよう考えたが、株主に利益をもたらす、長期での成長と成功を考えて雇用の削減という結論に至った」と説明した。

 クアルコムを覆う暗雲は当分、晴れそうにない。

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