「地下鉄」念頭に段階的整備 築地再開発、都が骨子案
東京都は19日、築地市場が豊洲市場へ移転した跡地活用を議論する「築地再開発検討会議」を開き、5月のとりまとめに向けた骨子案を示した。東京駅周辺と臨海部を結ぶ地下鉄構想などを念頭に、再開発を何回かに分けて進める「段階的整備」を盛り込んだほか、23ヘクタールの広大な敷地を4つのゾーンに分けて導入すべき機能を打ち出した。都は2018年度中にまちづくり方針を策定する。

都が示したのは検討会議が5月に出す「築地まちづくりの大きな視点」の骨子案。昨年10月以降に開いた5回の会議での議論を踏まえ、まちづくりの視点を(1)立地条件(2)時間軸(3)ブランド価値(4)新たな築地が持つべき機能(5)ガバナンス体制――の5項目で整理した。
大きな特徴は時間軸の項目で示した「23ヘクタールの段階的整備」だ。築地市場の跡地には、国の交通政策審議会が16年に出した答申で構想が示された地下鉄が将来、通る可能性がある。臨海部と東京駅周辺を結び、秋葉原から延伸したつくばエクスプレス(TX)と相互直通運転させるとの構想だ。
築地市場の跡地には幹線道路の環状2号も整備される。地下鉄の駅ができれば、隅田川や東京湾を運航する舟運もあわせ、築地は都心と臨海部を結ぶ交通の要となり、再開発用地としてのポテンシャルは大きく高まる。3月の検討会議では委員から「段階的に整備する戦略を持ってほしい」との意見が出ていた。
骨子案では「一気にではなく、段階的開発による価値の最大化を図るべきだ」と指摘。「段階的な開発を進めるエリアの区分、各エリアの範囲、進める順番などについて検討した上で、まちづくり方針に示し、順次具体化を図るべきだ」とした。
骨子案では跡地を4つのゾーンに分けて機能を示した。例えば、浜離宮恩賜庭園側は「庭園との一体性を考慮した緑豊かな空間とすべきだ」、隅田川沿いは「質の高いオープンスペースを確保すべきだ」、晴海通り側は「交通結節機能や防災機能を確保すべきだ」とした。中央部は「将来のインフラ整備などを勘案しながら、広域的観点から東京の将来を担う機能を段階的に導入すべきだ」とした。
都の骨子案に対して委員からは「どれくらいの経済効果を狙っていくのか明記した方がいい」(小西美術工芸社社長のデービッド・アトキンソン氏)、「経済的価値を最大化するのは当たり前として、文化的価値を最大化するという文言を入れてはどうか」(築地本願寺代表役員の安永雄玄氏)などの注文が付いた。
小池百合子知事は昨年6月に示した基本方針で築地跡地を「食のテーマパーク」にする構想を打ち出し、豊洲市場に整備する集客施設「千客万来施設」の事業者の万葉倶楽部(神奈川県小田原市)の反発を招いた。骨子案では具体的な施設内容は示さず「千客万来施設事業のコンセプトとの両立や相乗効果を図る」と明記するにとどめた。
検討会議は今回の骨子案を一部修正し、5月に「築地まちづくりの大きな視点」をまとめる。都は検討会議のとりまとめを参考に、より具体的なまちづくり方針を18年度中に策定。その後は民間事業者からの提案を受けて開発を進める考えだ。