P&G、独メルクの大衆薬 約4500億円で買収
【フランクフルト=深尾幸生】日用品大手の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は19日、独製薬大手メルクの一般用医薬品(大衆薬)など消費者向けヘルスケア事業を34億ユーロ(約4500億円)で買収すると発表した。2018年中の完了をめざす。大衆薬業界では大型の再編が相次ぐ。P&Gは今回の買収で大衆薬の品ぞろえを広げる。
独メルクは同業の米メルクの源流となった企業だが、現在は直接の関係はない。買収対象となる消費者向けヘルスケア事業の17年の売上高は9億1100万ユーロで、過去2年の年率成長率は6%だった。筋肉痛を緩和する薬や風邪薬などのほか、ビタミン剤やサプリメントなどで構成され、世界44カ国で販売している。
独メルクは医療用医薬品事業などに経営資源を集中するため17年9月、消費者向け部門の売却を検討すると表明していた。同部門の約3300人の従業員やオーストリアとインドの工場もP&Gに移る。
P&Gは風邪薬の「ヴィックス」や歯磨き関連の「オーラルB」などの消費者向けヘルスケアブランドで知られる。17年6月期のヘルスケア事業の売上高は75億ドルだった。
P&Gは北米に強く、欧州や南米、アジアに強い独メルクとの相乗効果が大きいと判断した。P&Gのパーソナルヘルスケア部門プレジデントのトム・フィン氏は「独メルクのブランド力のある製品群と従業員はP&Gの事業を強く補完する」と述べた。
後発薬大手のテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ(イスラエル)と大衆薬合弁を運営していたが、今回の買収はそれに代わるものだという。テバとの合弁は7月に解消する。フィン氏は「今回の買収により世界の大衆薬ビジネスでほかのパートナーの力を借りることなく成長を続けられる」と強調した。
P&Gは今月に入り、大衆薬部門の売却を検討している米製薬大手ファイザーと交渉していると報じられていた。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、19日までにファイザーとの交渉は打ち切られたという。
大衆薬をめぐっては3月に英グラクソ・スミスクライン(GSK)がノバルティス(スイス)との合弁事業を130億ドルで買収すると発表するなど、大型の再編が続いている。開発力が重要な医療用医薬品と異なり、大衆薬は価格競争に陥りがち。規模の拡大を目指した集約が進む。