ソニー、ロボカップの成功体験 再び
米大とAIロボ開発

2018/4/19 17:07
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ソニーは19日、米理工系の名門、カーネギーメロン大学(CMU)とロボット技術と人工知能(AI)を融合させる研究開発で提携すると発表した。主導したのはソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)の北野宏明社長。自ら立ち上げた自作ロボットの性能を競う世界大会「ロボカップ」の成功体験の再現を狙う。家庭で人を助けるロボットの要素技術開発を飛躍的に加速し、「AI×ロボティクス」分野で存在感を高める。

カーネギーメロン大との研究開発を主導する北野宏明・ソニーコンピュータサイエンス研究所社長

ロボカップから物流や人型ロボットのスタートアップが生まれた(昨年の名古屋大会)

「ソニーとCMUで組みましょう」。昨年1月、スイスで開かれたダボス会議。当時社長だった平井一夫会長はCMU幹部と向かい合った。平井会長の呼びかけにCMU幹部は二つ返事で応じ、提携が決まった。

北野社長はさっそく犬型ロボット「アイボ」の開発に携わったシステム研究開発本部統括部の藤田雅博部長らと共にCMUがある米ピッツバーグに飛んだ。

実はCMUは北野がソニーに入社する前に留学していた大学だ。CMUを訪れた北野は「大学は大きく変わったが、街は変わっていなかった」と懐かしそうに話す。ソニーも初代アイボを学術研究用に提供するなど、CMUと交流があった。

北野社長らとCMUの協議の結果、共同研究のテーマは「調理とデリバリー」に決まった。家で人に食べたいものを聞き出し、冷蔵庫にある食材からメニューを考えて提案。切ったり煮たり調理して皿に盛りつけ、テーブルに運ぶ――。このために必要な技術を開発すれば、AIとロボットが日常生活で身近な存在になり得る。

北野社長はCMUと連携で、ロボカップの成功体験の再現を狙う。ロボカップは「ロボットチームがサッカーでワールドカップ世界王者の人間に勝つ」という目標を掲げ、97年に始まった。

目標達成時期は50年先の未来だが、大会に参加したメンバーから次々と新しい技術が生まれた。例えば小型ロボットで参加した研究者が立ち上げた米キバ・システムズは、ロボットが自動で倉庫内の荷物の配送を管理するシステムを開発。

これに目を付けた米アマゾン・ドット・コムが買収し、今ではアマゾンの倉庫内物流システムを支えている。ソフトバンクが展開する人型ロボット「ペッパー」の原型となったロボット「ナオ」もロボカップで技術を磨いていった。

こうした歴史を目の前で見てきた北野氏はCMUとの提携で「技術革新をかなり加速できる」とみている。ただロボカップで生まれた成果は、ソニーの新ビジネスに直接結び付いていないとの指摘もある。

そこでCMUとの協業では成果をソニーの収益につなげる仕組みも用意した。北野氏と藤田氏と共にCMUを訪れたメンバーには立派なひげを蓄え、メガネをかけた男性がいた。ソニーの執行役員で、スタートアップに投資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「ソニーイノベーションファンド」を率いる御供俊元氏だ。

16年に設立されたファンドはAIやロボティクス分野などのスタートアップに積極的に投資してきた。CMUとの協業でも研究成果をもとに起業する研究者に出資し、スタートアップのスピード感で実用化を後押しする。CMUとの協業は他のスタートアップを引き付ける起爆剤になる、との期待もある。

スタートアップの事業育成も手助けする。御供氏は4月、新規事業育成プログラム「SAP」のトップも兼務。これまで10以上の事業を立ち上げたSAPのノウハウを持ち込む考えだ。

大学に寄付講座を開設し、研究成果を取り込んで事業化する例は少なくない。ソニーは自社での事業化に加え、CVCや新規事業立ち上げのノウハウを生かし、研究開発から事業化まで一貫して遂行する体制を取る。

北野社長は「ビジネスとして取り組む成果はしっかり出していく」と話す。今後5年以内に、いくつかの技術を実用化する見込みだ。

ソニーは1月、新型アイボを発売し、AI×ロボティクス事業に再参入した。世界のIT(情報技術)大手がAIで覇権争いを繰り広げるなか、ソニーはものづくりや事業創造のノウハウを武器に対抗していく。(岩戸寿)

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