2018年11月16日(金)

長寿県・滋賀を支える県民性(もっと関西)
とことんサーチ

コラム(地域)
2018/4/19 17:00
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滋賀県といえば琵琶湖のイメージが強いが、最近は「長寿県」として注目を集めている。厚生労働省の2015年の調査で、「長寿大国」で知られる長野県に代わり、滋賀の男性が初めて平均寿命で日本一に躍り出たからだ。長寿の秘密は何なのか、調べてみた。

■禁煙・減塩コツコツ一丸

まず、公衆衛生学が専門の滋賀医科大学の三浦克之教授を訪ねた。三浦教授は寿命に影響するキーワードとして「喫煙、食塩、肥満、運動」を挙げる。

喫煙はがん、食塩は脳血管疾患、肥満は糖尿病など、運動は筋力の維持との関連性が高い。滋賀の男性はがんと脳血管疾患の死亡率が低い。厚労省人口動態統計特殊報告(15年、年齢調整済み)によれば、がんによる死亡率は46位、脳血管疾患は47位だ。

これには理由がある。滋賀の成人男性の喫煙率は全国最下位。1日平均の食塩摂取量も下から4番目だ。

もっとも長寿日本一への道は平たんではなかった。1965年の平均寿命は27位、95年までは中位に甘んじた。県衛生科学センターの井下英二所長は「94年に設置した健康づくり県民会議。そして滋賀の県民性がけん引した」と指摘する。県民会議が中心となり、97年に健康福祉ガイドブックを作成。全戸配布し、健康への関心を高めた。

県民性についてこんなエピソードがある。87年の「抱きしめてBIWAKO」。障害児施設の施設建て替えの資金捻出のため、約21万人が手をつなぎ、琵琶湖を取り囲んだ運動を展開した。「滋賀の人は1つの目標を決めると一丸となって頑張る。そんな気質がある」(井下所長)

喫煙率の低下など目標を県が掲げたことで、県民が一体となって取り組み実現させたと井下所長はみる。禁煙では受動喫煙ゼロを目指す運動や学校での禁煙教育が功を奏した。

■健康推進、草の根で食育

また食塩削減には約3600人の健康推進員の存在が欠かせない。県内各地の公民館で減塩料理の講習会を開催。家庭に出向き味噌汁の塩分を測定した。こうした運動で県民の理解を進めた。現在は野菜摂取拡大に力を入れている。

たばこや食塩など危険因子への対応は効果はある。これが長寿への直接的な要因とすれば、間接的な分野でも異彩を放っている。

滋賀医科大の三浦教授が注目するのはボランティアへの参加率。滋賀は1位だ。特にまちづくりのための活動が盛んだ。「積極的に地域との関わりを持つことで生活習慣も良くなる」と指摘する。

スポーツへの参加も盛んだ。三浦教授は「日本一広い琵琶湖が真ん中にあり、周辺は公園も多く運動しやすい環境がある」とみる。

他に何か滋賀ならではの秘密はないのか。見つけたのが近江八幡市に伝わる不老長寿の果実「ムベ」伝説だ。この地で天智天皇が健康的な老夫婦に出会った。夫婦は長寿の秘密としてある果物を差し出した。一口食べた天皇は「むべなるかな(もっともだ)」と発したと言い伝えだ。

ムベはアケビ科の一種で秋に実がつく果物。「前出のむべ家」(近江八幡市)ではムベを原料にしたソーダ飲料やワイン、アメなどの加工品を販売している。

さらにこんなデータに出くわした。人口10万人当たりの飲食店数だ。滋賀は46位。店が少ない。ただ裏返せば家庭でバランスの良い食事をする機会が多いことになる。結果として健康につながるわけだ。

男性だけではない。女性の平均寿命も伸び、15年は4位だ。衛生科学センターの井下所長は「男女とも長寿日本一になるのも夢ではない」とみる。県では「環境要因が長寿にどう関係するのか、滋賀大学に分析してもらっている」(健康寿命推進課)。5月上旬にまとめ、ホームページで公開する計画だ。

禁煙し、食塩と脂肪の取り過ぎに注意する。そして適度な運動。言うは易(やす)く行うは難しだが、滋賀に住んでいるのを機に実践したいものだ。

(大津支局長 橋立敬生)

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