企業、買収先の税務把握に課題 ソフトバンク申告漏れ
ソフトバンクグループ(SBG)が東京国税局に、2016年3月期までの4年間で計約939億円の申告漏れを指摘されていたことが判明した。買収した海外企業の子会社の納税状況を把握しきれなかったことが原因とみられる。専門家は「税務面のチェックが甘い日本企業特有の弱点が露呈した」と指摘。他の企業にも同様の課税リスクがあると警告する。

SBGが過去に買収した米企業がタックスヘイブン(租税回避地)に子会社を持っており、当局はSBGの所得と合算すべきだと判断した。
「いつか起きると懸念していた」。国際税務に詳しい弁護士は、今回の問題の背景に日本企業に共通する課題があるとみている。海外企業の買収に際し、税務面のチェックが甘いという。
企業買収では買収先の企業のデューデリジェンス(資産査定)という作業が欠かせない。どれくらいの資産や負債を持っているかを把握する作業で買収実行や価格決定の判断材料だ。
日本企業の資産査定は事業の収益性や規模などが中心になっており、複数の専門家は「税務の観点から買収企業のグループ会社をチェックする意識は乏しい」と指摘する。SBGも子会社の細かな税務処理を把握していなかったもようだ。
一方、欧米企業は税務に関するリスク査定を徹底する。元国税庁の角田伸広税理士は「買収先の企業の子会社の納税状況やどんな節税策を講じているかまで綿密に査定する」と指摘する。買収対象の企業が行きすぎた節税策を用いていないかなどは重要なポイントだ。
M&A助言のレコフ(東京・千代田)の調査では1~3月の日本企業の絡むM&Aは865件と前年同期比3割強増え、同期間で最多だった。とくに日本企業による海外企業の買収が増えている。当局は海外企業の買収に関連した税務調査を強めているとの見方もある。「SBGのような申告漏れを指摘されるケースが相次ぐ可能性もある」(角田氏)と指摘する声も多い。