パーク24、トヨタもうらやむ2万台の運転データ - 日本経済新聞
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パーク24、トヨタもうらやむ2万台の運転データ

証券部 和田大蔵

駐車場運営最大手のパーク24が、次世代車開発のキープレーヤーとしてにわかに脚光を浴びはじめた。駐車場運営に次ぐ収益源として育ててきたカーシェアリング事業が、自動運転などの新技術の開発に欠かせないデータの宝庫となる可能性が出てきたためだ。次世代車の台頭という自動車産業の大転換期に対応した成長戦略が軌道に乗れば、株式市場での評価が高まる可能性がある。

パーク24は今月3日、トヨタ自動車とカーシェア事業で業務提携すると発表した。パーク24のカーシェアサービス「タイムズカープラス」にトヨタが通信型レコーダーなどを搭載した多目的スポーツ車(SUV)60台を投入。レコーダーを通じてカーシェア利用者の運転の仕方や走行距離、移動範囲などのデータを10カ月間収集するという。トヨタは蓄積したデータを人工知能(AI)を活用して分析し、新たなカーサービスや車載端末開発などに生かす。

パーク24は同様の取り組みをカーシェア事業に参入した2009年当初から独自に展開してきた。自社開発したレコーダーをカーシェア車両のほぼ全てに搭載し、運転データを会員情報とひも付けて収集する取り組みだ。

たとえば「何歳の人が、いつ、どこで急ブレーキをかけたか」といった運転に関する情報を集め、運転しにくい場所などを特定。そのうえで収集データから駐車場内で車を止めにくい場所を割り出し、車庫の配置などを変えて稼働率を改善させた例もある。今回はトヨタと組むことで「より精密なデータを収集できる」(パーク24のグループ企画部)ともくろむ。

当然、トヨタも販売車に車載通信機を標準搭載するなど自前で運転データの収集を進めている。だがデータ収集の効率では自家用車とカーシェアでは大きく差が出る。自家用車は通勤などで1日平均で30分程度しか使われないのに対し、96万人の会員を抱えるパーク24のカーシェア車両は1日で推定4~5時間は稼働しているからだ。今回の提携はトヨタがパーク24のカーシェアの車両ネットワークにデータ収集の手段として目を付けた結果といえる。

トヨタをはじめ完成車メーカーが運転データの収集に力を注ぐのは、運転支援システムなどを含めた自動運転技術の開発にデータが不可欠だからだ。データを効率良く収集できるカーシェア事業者は「将来の自動車開発で重要な役割を担う可能性が高い」(外資系証券)。事業者別の車両数はパーク24の約2万台に対し、三井不動産が展開する「カレコ」は約2800台、オリックスは約2700台にとどまる。

車両を複数で共有するという点ではレンタカーも同じだが、長距離移動に使われることが多いレンタカーに比べるとカーシェアは周辺地域の運転データをムラなく集めるのに向いている。パーク24の西川光一社長は「いろいろな企業から収集したデータを使って一緒に何かやらないかと声をかけられている」と明かす。

パーク24株の18日終値は3050円と2月につけた年初来安値(2508円)から22%上昇した。ただ08年から足かけ約8年間続いてきた株価の長期的な上昇トレンドは途切れており、2016年7月に記録した株式分割考慮後の上場来高値(3655円)にはなお開きがある。

17年10月期は海外駐車場会社の買収費用やカーシェアリングの初期投資がかさみ、3期ぶりの減益となった。市場の成長期待も薄れてしまっているが、次世代車の開発にパーク24のデータが本格的に貢献することが明らかになってくれば市場の評価も変わってくるだろう。

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