2018年7月20日(金)

世界を動かす「主役」に 大学トップ、入学式メッセージ

2018/4/17 20:19
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約3100人の新入生が出席した東京大の入学式(12日、東京都千代田区)

約3100人の新入生が出席した東京大の入学式(12日、東京都千代田区)

 各地の大学で入学式が開かれ、新入生が期待を胸にキャンパスの門をくぐった。自ら学び考えよ、世界へ羽ばたけ、地域で活躍を……。学長らの式辞には、次代の担い手である若人の成長を祈る思いがにじむ。経営や教育研究で最近変化のあった大学を中心に、トップが贈ったメッセージを紹介する。

多様性の大切さ説く

 この春、トップが交代した大学では、入学式の式辞の言葉にも新鮮な響きがこもった。

 立命館アジア太平洋大の入学式で出口治明学長は「90もの国や地域から多彩な個性が集まっている」と学生の多様性を強調。「たくさんの友達をつくって世界の人は何を考え、どういう人生を歩もうとしているのか話し合い、自らの肥やしとしてください」とメッセージを送り、「ぜひ広い世界に飛び出して」と留学を促した。

 ライフネット生命保険創業者で、歴史に造詣が深いことでも知られる出口氏。「何百年と読み継がれてきた古典は素晴らしい。優れた本は色あせることが全くない」と読書を勧め、「イリアス」「ツァラトゥストラはこう言った」など推薦する古典30点のリストを入学式の式次第に挟んだ。

 立教大の郭洋春総長は「大学は人生の構想力を磨く場」と語った。自分の将来へのイメージを持ち、実現するには「常に好奇心を持って知識を身につけ、最新の情報を収集し研究するとともに実行するという日々の研さんが必要」と説いた。

 韓国籍で、立大で戦後初の外国籍の総長。「皆さんは日本社会、世界を動かす可能性を秘めている。未来の主役になってほしい」と励ました。

 「学術と人々の距離が遠くなっている。社会から学術への無条件の寛容さがなくなり、大学に対する目には厳しいものがある」と危機感を示したのは東京理科大の松本洋一郎学長だ。分野を超えて様々な観点から社会的課題の解決法を考える必要があると強調。「最先端の専門知と幅広い教養を併せ持った知のフロントランナーとなってほしい」と述べた。

 東京工業大の益一哉学長は「多様性は創造性を育む。個人的なビジョンを発展させ、多様な世界の幅広い理解と組み合わせる一つの方法は海外で学ぶことだ。変化する学生のニーズに対応した様々な留学の機会を設ける」と海外留学を勧めた。

変化の時代、教養不可欠

 知の大競争が激化する中、地球規模で活躍できる人材の育成が急務だ。

 東京大の五神真学長は「現在は変化の時代」として「知を愛し求める姿勢が乗り切る指針となる。変化を作り出す一人として能動的に立ち向かい、大いに楽しんでほしい」と呼びかけた。

 変化を楽しんだ先輩として岡倉天心を紹介。明治期に師のフェノロサと日本美術の価値を世界に広めた功績に触れ「歴史を作り出した交流を想像し、新たな知を作る糧として」と語った。英語の学習で、2018年度に設けた「国際総合力認定制度」の活用を求めた。

 「7つの力を身につけてほしい」。昭和女子大の坂東真理子理事長・総長はグローバルに通用する力▽語学・英語を使いこなす力▽IT(情報技術)を使いこなす力▽コミュニケーション能力▽自分で課題を発見する力▽自分から前に進み最後まで成し遂げる行動力▽自分を大切にする力――の7つを挙げた。

 19年9月には米テンプル大のジャパンキャンパスが敷地内に移る。互いの授業を受けるだけでなく「学生同士が交流し、例えばデザインや日本食などの分野でも刺激し合えるのではないかと期待している」と話した。

 「日本や諸外国の自然や文化の歴史に通じ、自在に話題を展開できる広い教養と、常識を疑い真理を追究する気概を身につけておかねばならない」。京都大の山極寿一学長は文系・理系を問わず、質の高い知識を持つ必要性を強調した。

 早稲田大の鎌田薫総長は「経済格差の拡大や地域紛争、環境破壊など地球規模で解決を図るべき課題に直面している」と指摘。問題の本質を見抜き、解決策を練り上げて実行するといった「主体的な活動」を生涯続けられる基礎力の獲得を目標とするよう願った。

「支えられている」自覚して

 地方再生の核として生き残りを目指す大学のトップは地域貢献への強い意欲をにじませた。

 私立から転換し4月に開学した公立諏訪東京理科大。河村洋学長は「大学運営には資金が必要。家族、自治体、国全体に支えられているということを自覚して成長してもらいたい」との認識を示した。

 「地域の代表的な会社の社長と話すと海外に出て行ける人が欲しいと言われる。グローバルな力と感覚を身につけて」と語り、「諏訪地方は歴史的にも産業的にも厚みがある。地域から多くを学んでほしい」と求めた。

 今春「都市デザイン学部」を開設した富山大。都市計画をはじめとした地域創生の担い手の育成を目指す。遠藤俊郎学長は「全学の力を結集し『未来の街/社会を創造する』という従来の国立大学にはない視点に立ち、新たな『知の創出』を目指す学部だ」と強調した。

 熊本地震の被災地の復興は3年目に入った。熊本大の原田信志学長は「何よりも我々を力づけてくれたのは学生のボランティア活動であり、多くの学生が復学後、極めて積極的に学業やクラブ活動に力を注いだことだ」と振り返った。「困難を解決すべく行動する若者のエネルギーは本当に素晴らしい。これこそが我々が目指す大学教育の原型だ」とも語り、逆境を乗り越えられる若者の育成に力を入れるとした。

 大阪府立大は19年4月に大阪市立大と運営法人を一本化し、22年4月の大学統合を目指す。辻洋学長は「伝統を大切にし、魅力ある新大学を目指していく」と述べ、「多様」「融合」「国際」の3つの視点を重視すべきだと指摘した。大学生活については「答えを覚えることに集中するのではなく『どう発想すべきか』というプロセスを学んでほしい」と説いた。

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