適度な間食で気分転換
腹が減っては戦ができぬ――。仕事の合間、小腹を満たすためについ手が伸びてしまう間食。しかし体形を気にして食べた後に罪悪感にさいなまれるビジネスパーソンは多いはず。運動不足ならなおさらだ。食欲を我慢して乗り切る人もいるだろう。ところが最近、間食がかえって太りにくい体づくりにつながるとの考えが広がってきた。一体どういうことなのか。

「食べることで太りにくい体をつくる」。そんな一見正反対のことを堂々と打ち出すのが「ヘルシースナッキング」という新しい食事法だ。具体的には朝・昼・夜の3食に加え、「ヘルシー」な間食を少量ずつ小まめにとるよう勧めている。ただし、1日に摂取する総カロリーは普段と変わらないようにする。つまり、間食をとった分3食の量を減らすということだ。
小まめに食べるのがヘルシースナッキングのカギだ。そもそも太る要因として大きいのが夕食時の「どか食い」。忙しいと特に昼食から夕食まで時間が空く場合が多い。空腹感が蓄積した結果、夕食を必要以上にたくさん食べ体重の増加につながってしまう。
小まめに食事をとれば空腹感を抑えられる。また、どか食いは血糖値の急上昇にもつながるため健康にも良くない。では何をどれだけ間食として食べるべきなのか。
米国で2016年ごろから話題となったヘルシースナッキングをいち早く日本に導入した森永製菓が推奨するのは、たんぱく質と食物繊維を多く含んだお菓子。同社マーケティング本部でチョコレートカテゴリー担当の郭恵昭さんは「たんぱく質は体に不可欠な成分で、筋肉になれば代謝も上がる。食物繊維は腹持ちするため最適」と話す。
当初、森永製菓は「ヘルシースナッキング」と名付けたチョコやビスケットを売り出していた。しかしヘルシースナッキングが浸透していない国内では売れなかった。そこで今春からはチョコレート「おいしくモグモグたべるチョコ」シリーズの売り場でヘルシースナッキングを紹介する手法に切り替えている。

同シリーズの新製品にはたんぱく質と食物繊維をそれぞれ5グラムずつ含ませ、小まめに食べやすいよう初めてジッパーもつけた。おいしくモグモグたべるチョコを主軸とし、クラッカーやプロテインバーなど全14品目をそろえ公式サイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でヘルシースナッキングを推奨している。
郭さんは「間食で1日当たりに200キロカロリーほどをとり、おなかが満たされるぶん3食の食事を減らせば健康的な食習慣につながる」という。食品メーカーではカゴメも3月20日に「野菜生活100 Smoothie(スムージー)」の新しいテレビCMを開始し、ヘルシースナッキングを打ち出す。食物繊維を豊富にとれるため女性を中心に人気を集める。
適度な間食が健康維持につながれば、忙しいビジネスパーソンにとってはもうけものだ。気分転換にもなりリラックスして仕事がしやすい。郭さんは「お菓子を我慢してイライラするよりも適度に食べた方が仕事のストレス解消になる」と指摘する。糖質を制限するダイエット法も話題だが、糖質を完全にとらなくなると筋肉が落ち太りやすい体になりやすい。
ちなみに多くのビジネスパーソンにとって必需品のコーヒーは、リラックス効果のあるカフェインや脂肪を燃やすクロロゲン酸を含む。ただし、1日3~5杯とされる適量を超えるとカフェインにより疲労感が増すのでご注意を。
ヘルシースナッキングは、油分の多いポテトチップスなどのでは1日の総カロリーをコントロールしにくくなる。しかし「食べたいものを好きなときに好きなだけ食べるのが仕事にも良いんだ」という意見ももちろんあるはず。ただもし普段我慢しているなら、気分転換し健康も維持するための仕事場での手段として、ヘルシースナッキングを実践してみてはいかがだろう。
ナッツ類などおすすめ
大妻女子大学教授 青江誠一郎氏
ヘルシースナッキングは学術的にも有効と言えるのか。大妻女子大学家政学部食物学科の青江誠一郎教授に聞いた。

――どこで生まれた考え方ですか。
「1日の食事は分けるほど血糖値が上がりにくくなり健康に良いという論文があった。そのうち海外セレブが仕事の合間にナッツを食べるなど実践し始め話題になった」
――なぜ太りにくくなるのでしょうか。
「体内には時刻を感知する遺伝子がある。朝日を浴び朝食を食べるとリセットされるといわれ、午後3時ごろに脂肪を合成する酵素などが少なくなる一方、午前2時ごろに多くなる。午後3時に間食を挟んでも太りにくく、ヘルシースナッキングが科学的にも正しいと言われ出した」
「ただ、夜にスマートフォンを長時間いじっていると体内の時刻の感知が実際とずれる。正しい時間でも太りやすい状態になることがある。その意味では朝ちゃんとした時間に起きて食事をとるのがヘルシースナッキングのスタートと言える」
――ヘルシースナッキングの間食に上限は。
「1日のカロリーが1800~2000キロカロリーとすると1割が目安。食物繊維が豊富なナッツ類や、エネルギーにもなり太りにくいたんぱく質がおすすめ。一方で糖質が多い食品は血糖値が上がりやすいためNGだ」
――仕事の集中力アップにもつながるものは。
「脳を動かすにはブドウ糖が必要。実はブドウ糖が足りないと体は筋肉を分解するため太りやすくなる。あめやグミ、カカオの多いチョコレートなど甘みのあるものを適度にとるとよい」
(聞き手は池下祐磨)