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日本で強くなる 女子ゴルフ鈴木愛の選択

編集委員 串田孝義

出張や旅行で海外に行って帰るころになると、テレビの英語が聞き取れるようになり、「今度海外へ行くまでにもうちょっと英語を鍛えておこう」という意欲がわいてくる。こんな経験、誰にもあるはずだ。

ゴルフは男女とも海外メジャー初戦が終わり、国内外で「メジャー効果」ともいえる結果を残す選手が相次ぐ。初出場だったマスターズ・トーナメントで28位と4日間戦い抜いた小平智は、米国に残って翌週のRBCヘリテージで米ツアー初優勝を飾った。

鈴木愛はスタジオアリス女子オープンで2位に4打差をつけ優勝した=共同

女子の鈴木愛はANAインスピレーションで決勝進出者中最下位と打ちのめされたが、休むことなく帰国出場したスタジオアリス女子オープンを2位に4打の大差をつけて優勝した。いずれも難設定のメジャーを経験して得られた課題と自信がさっそく血肉となった証しといえる。

日本で腕磨き、海外メジャーで試す

鈴木愛は日本の昨季賞金女王。賞金女王には翌年から3年のシード権が与えられる。賞金女王はシード確保を保険にして米ツアーに挑戦する、というのが近年の風潮ではあるが、鈴木愛は「いまは8割くらい日本でという気持ち」と語る。日本を主戦場にして腕を磨き、その成果を海外メジャーで試す、というわけだ。

もちろん、情報収集は怠りない。「米国に行くなら若いときがいい、とみなさん言ってくれる。移動が大変だ、とも。ただ今行ったところで何一つうまくいかない。実力不足があきらかすぎて」。米国のスター、ダイナ・ショアが1972年創設、83年からメジャー大会となったANAインスピレーションの開催コース、ミッションヒルズCC(米カリフォルニア州)で鈴木愛は「フェアウエーから打ってもバーディーが取れない。1、2ヤード単位でショットを打ち分け、アプローチの引き出しをもっともっと増やさないと勝負にならない」ことを思い知った。第3ラウンドでは痛恨の80をたたいた。

鉄は熱いうちに打て、ではないが、帰国後の鈴木愛は練習熱心ぶりに一層拍車がかかった。ラウンド後も誰より遅くパッティンググリーンに居残って、パター選びからやり直しだ。それでいて休みなく出場したスタジオアリス女子は、初日に瞬間最大20メートルの強風が吹くなど悪条件の下で通算10アンダーの圧勝劇を演じた。

レベルの低い日本でいくら勝っても仕方がない、という外野の指摘もある。男女を通じて、そんな内弁慶型の選手たちが敗れる姿をこれまで何度も見てきた。だが、いつまでもそうだろうか。

今年が13回目だったスタジオアリス女子の優勝スコアを見ると、日本女子ツアーも着実にレベルアップしているのがわかる。73年開場の花屋敷GCよかわ(兵庫県三木市)を舞台に2005年の第1回、服部道子は通算1アンダーで優勝した。天候状況は毎回異なり、大会ごとにコース距離も変化してはいるものの、選手のトレーニングの充実、道具の進化を映して優勝スコアはその後伸び続けている。16年の菊地絵理香は第2ラウンドで63のコースレコードを記録し、初めての通算2けたアンダー(14)で優勝した。

鈴木愛は今季すでに自身の年間最多に並ぶ2勝をマークしている=共同

17年大会のテレサ・ルー(台湾)は68、69、68と3日間60台をそろえて通算11アンダーで優勝。今年の鈴木愛は3年続けて2けたアンダーの優勝スコアをマークすることで、国内女子の進化にブレーキをかけることなく、ツアー全体をより高みへと引っ張り上げてみせた。

勝利の数にこだわるのも一手

フィールドの質は充実一途の日本の試合とはいえ、世界の成長スピードに負けじと強くなるにはどうすべきか。鈴木愛のいまの答えは「1打1打に集中する」。平均ストローク1位、平均バーディー数1位、平均パット数1位、リカバリー率1位など攻守両面にわたってあらゆる数値が日本最強の裏付けとなってはいる。こうしたショット、パットの質の向上はもちろん、それらを駆使して勝つ経験値をもっと上げていきたい。

賞金額の積み上げ以上に勝利の数にこだわってはどうだろう。今季すでに自身の年間最多に並ぶ2勝をマーク。国内には03年の不動裕理の年間10勝という大記録もある。ツアー通算7勝の鈴木愛に足りないものがあるとすれば、試合を勝ちきるための「心の体力」。勝って勝ちまくって、そうすれば日本にいたって強くなれる。偉そうにいってはいるものの、記者の英語の勉強は海外から帰国後いつも三日坊主で終わるのが常。夕暮れまで練習するプロゴルファーの姿を見ては自らを恥じる思いでいっぱいになる。

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