日本にも美術「追及権」創設を、著作権団体などが会見 - 日本経済新聞
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日本にも美術「追及権」創設を、著作権団体などが会見

著作権協会国際連合(CISAC)、日本美術著作権協会(JASPAR)、日本美術著作権機構(APG-Japan)、日本音楽著作権協会(JASRAC)は2018年4月13日に会見を開き、芸術作品の創作者に対する知的財産権の一種である「追及権」を日本でも創設するよう求めた。

追及権の対象となるのは、絵画や書道、彫刻など1点ずつ手作業で制作し、大量複製が難しい視覚芸術の著作物。オークションなどで取引された際に取引額の一定比率を著作者に支払う。CISACらによると欧州やオーストラリアなどを中心に88カ国が追及権を制定しており、支払額はおおむね2~5%程度。欧州連合(EU)域内では1回の取引あたりの支払額に1万ユーロ強の上限を設けているという。

現在日本国内では追及権が制定されておらず、日本国籍の芸術家の作品が欧州など追及権の制定されている国で取引されても支払いは受けられない。また追及権のある国の芸術家による作品が日本で取引された場合も支払いはない。

CISACのガディ・オロン事務局長は「アーティスト、とりわけ経済的に困窮しやすい若手のアーティストにとって重要な収入源になる。また、(オークションなどで取引を重ねて)作品の価値が上がっても著作者がそれを享受できないのはあまりにも不公平だ」として導入の必要性を強調する。

JASPARの小川明子理事は「過去に追及権を導入した英国では、美術品のオークションはもともと高額だという背景もあり、追及権による支払いを上乗せしても経済的な影響はほとんどなかった。英国の若手アーティストは追及権の制定で生活が大きく変わったほか、自分の作品が取引されたという情報が届くことによるモチベーションの向上効果も大きい」と指摘する。

ただ、追及権の制定に向けた国内の機運は高まっているとは言い難いのが現状だ。文化庁は追及権について、文化審議会の小委員会で「要望があることは認識しているが、立法事実となる調査やデータを持っていないと認識している」と表明している。

世界知的所有権機関(WIPO)の著作権等常設委員会でも、EUやアフリカ諸国が追及権について「常設議題にすべきだ」としているが、日本や米国はこれに慎重な意見を表明している。今後国内で具体的な議論が始まったとしてもオークション団体などの反発は必至で、議論の長期化が見込まれる。

(日経 xTECH/日経コンピュータ 金子寛人)

[日経 xTECH 2018年4月13日掲載]

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