2019年1月21日(月)

未明の爆音、声震わす市民 米英仏のシリア攻撃

2018/4/14 18:54
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夜が明けきらぬ暗闇を切り裂いたミサイルの閃光(せんこう)――。米英仏軍が日本時間の14日午前、シリア首都ダマスカス近郊などへのミサイル攻撃に踏み切った。突然の爆発音と地響きに声を震わせる市民。日本のシリア人は祖国で暮らす親しい人の無事を祈る。「望むのは平和だけ」。支援団体も内戦がやまない現地の情勢に心を砕いた。

米英仏軍によるシリアへの軍事攻撃が始まり、対空砲火と煙があがるダマスカス上空(14日)=AP

「遠くの方で爆発音が何度も響き、空にオレンジ色の線が何本も光った」。ダマスカス市のシャハラホテル。男性従業員(32)がミサイル攻撃の瞬間について声を震わせながら語った。「攻撃の可能性はSNS(交流サイト)を通じて数日前から把握していた。ついに来たかと思った」

最初の爆発音を聞いたとき、男性はホテル1階で仮眠しており、驚いて跳び起きると、近くの窓が小刻みに揺れていた。国営放送を通じてミサイルの着弾する様子が繰り返し放送された。

男性は「内戦で既に多くの人が亡くなった。被害が広がらないように祈ることしかできない」と力なく話した。

米軍は1年前、アサド政権の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃しており、同政権への攻撃は2度目になる。市内の飲食店の男性従業員(47)は「爆発音が数分続いて恐ろしかった」という。市内にある教会の女性関係者は「早く安心して暮らせるようになりたい」と消え入るような声で話す。テレビのニュースで状況を見守るものの「何が起きるのか、自分の身はどうなるのだろうか」とつぶやいた。

日本で暮らすシリア人は祖国の混乱を憂い、残した家族や友人の無事を願った。東京工業大で建築学を学ぶシリア人のザイナー・ホサムさん(42)は朝、ネットニュースでミサイル攻撃を知り、ダマスカスの友人らを気遣う。

「攻撃があったのは軍事施設などと報じられている。無事だといいが……」とおもんぱかり「シリアが米国とロシアの争いの舞台になっている。市民が求めているのは平和。空爆は誰も望んでいない」と強調した。

8年前に来日した千葉県市川市のコンサルタント業のシリア人男性(34)は「私がいた頃は、女性が夜に1人で出歩けるほど安全な国だった。なぜこんな状況になってしまったのか……」。母親と兄姉の3人が一時壊滅状態となったアレッポに暮らす。「米国やロシアなど大国の利害が絡む戦闘だ。当事者であるはずのシリア人の声が全く届かない」と憤った。

シリアへの攻撃が明らかになった14日、東京都目黒区の東大駒場キャンパスでは、現地の窮状を訴えるシンポジウムが開かれ、シリア生まれのパレスチナ人音楽家、エイハム・アハマドさん(29)が登壇した。

アハマドさんは内戦が続くシリアの街角でピアノの弾き語りを続けた「現代の戦場のピアニスト」として知られる。現在は妻子とドイツで暮らすが、両親はダマスカスに住む。来場者に向けて「シリアの現状を人ごとだと思わないで。政府への訴えでもいい。何かしてほしい」と呼び掛けた。

■支援団体に焦り「物資届くのか」

国内のシリア支援団体からも、現地の状況に対する懸念の声が相次いだ。「今回の攻撃で事態がまた複雑になった。いつになったら平和が訪れるのか」。NPO法人「難民を助ける会」の名取郁子支援事業部長は頭を抱える。年に数回トルコに渡り、シリアとの国境付近の街で、仕事探しや食料配布などの難民支援に取り組んできた。

「難民キャンプでの滞在が長期化し、仕事も教育もない環境で生活設計ができない不安が高まっている」。国連などの停戦協議が進んだ時期もあっただけに「武力ではなく、対話による解決ができないものか」とやるせない思いを打ち明けた。

シリアに食料などの支援物資を送るNPO法人の70代の男性代表は「情勢が悪化すれば、送った支援物資が届いているのかどうかも確認できなくなる」と漏らす。

約3年前からシリアに支援物資を送る活動を続けており、4月上旬にもトルコ経由で衣料品を発送したばかりだった。今後も継続して物資を送る予定だが「やれることは少ない。少しでも事態が改善すればいいが……」と言葉少なだった。

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