2019年3月20日(水)

UACJ、合併功労者 強行突破が招いた「退場」

2018/4/13 17:10
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アルミニウム国内最大手のUACJを巡る首脳人事が13日、決着した。6月下旬以降も山内重徳会長(69)と岡田満社長(61)の代表権を維持する人事案に対し、筆頭株主の古河電気工業などが反対。UACJ側は強行突破を図ったが、2人とも相談役に就任する「退場」という結論に至った。感情のもつれは簡単にはほぐれそうになく、対立が再燃する火種は残ったままだ。

人事案を撤回し、相談役に退くことを発表するUACJの山内会長(左)と岡田社長(13日午後、東京・八重洲)

「保身のためではない」

「保身のために代表取締役を維持したわけでない」――。

13日午後、東京都内で緊急会見した山内会長と岡田社長。2人の表情は硬いままだった。古河電工がUACJの人事案に反対の意向を表明してから、関係者の理解を得ようと努力したが山内会長は「人と人が理解し合うことは思った以上に難しかった」と無念さをにじませた。

UACJが2月27日に発表した人事案では、山内会長が留任し、岡田社長が副会長に就任。社長に昇格する石原美幸取締役(60)も含めた3人に代表権を持たせる内容だった。だが当日の記者会見で3人の役割分担については明言せず、社長・会長経験者が新体制でも影響力を残す印象を払拭できなかった。

「この案ではこちらとしては認められません」

人事案発表から遡ること2週間。2月13日、山内会長と岡田社長は東京都内の古河電工本社を訪れた。2人が示した人事案に対し、古河電工の小林敬一社長(58)の反応はつれなかった。「最後は理解してくれるだろう」。小林社長の表情は一貫して厳しかったが、山内会長と岡田社長はまだ楽観的だった。

UACJは2013年、古河電工の連結子会社でアルミ圧延最大手の古河スカイと住友金属工業(現新日鉄住金)系の住友軽金属工業が合併して誕生した。山内会長は当時、住軽金の社長。岡田氏は古河スカイの社長だった。合併後も二人三脚で経営を切り盛りしてきた。

「合併の功労者」。山内氏、岡田氏とも社内外でそう評されてきた。両氏の決断が世界3位のアルミ圧延メーカーの誕生につながった。自信を持って経営してきただけに、山内氏、岡田氏には慢心があった。「まさか表立って反対はしないだろう」。水面下の交渉を続ける中、関係者にそう打ち明けていたが、その「まさか」が起きてしまった。

UACJの人事案発表後に古河電工が公表した1枚のプレスリリース。「山内、岡田両氏は取締役も退任すべきだ」と強い表現で記されていた。代表取締役が3人になる体制に異論を唱えた上で、これまでの合併効果が限られていることや、株価の伸び悩みなどを理由に反対を表明した。対立は一気に表面化し、抜き差しならない状態に陥った。

一方の古河電工。小林社長は「3人の代表権は権限が曖昧。認められない」と山内、岡田両氏の退任を主張することでコーポレートガバナンス(企業統治)の正常化を主張したようにみえる。だが、古河電工の強硬路線に対してアルミ業界で「所詮は古河と住友の対立だ」と冷めた声が多いのも事実だ。

問題長期化を回避

複雑なのはUACJの社内に目を向けると、必ずしも「古河対住友」の構図ではないことだ。旧古河スカイ出身者が不満を持っていたのはかつての親会社、古河電工本体。アルミ事業部門は長らく古河電工本体にあったが、出資比率が段階的に下がった現在でも「細かいところまで口を出し、いまだに親会社意識が抜けない」(UACJ関係者)。UACJ社内の対立よりも古河グループの不協和音が事態を深刻化させたとも言える。

経営陣同士で水面下の交渉を進め、落としどころを探ってきた古河電工とUACJ。ところが3月下旬、混乱に乗じて旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが株式を取得したことが判明。問題の長期化は両社にとって得策ではないと判断したようだ。

UACJは業績が伸び悩み、株価も低迷している。累計で1000億円近くを投じたタイ工場は17年度まで4期連続で損失を計上し、足を引っ張っている。格付投資情報センター(R&I)は12日、同社の格付けBBBについて方向性を「安定的」から「ネガティブ」に見直している。新体制では大株主との関係改善とともに収益向上に全力で取り組む必要がある。

対立した古河電工とUACJどちらにも言い分がある。株主重視の企業統治改革が進む中、関係性が濃い企業同士であっても「なれ合い」は許されなくなってきており、相次ぐ業界再編で資本構成は複雑になっている。「まさか」が起きる可能性はどの企業にもある。

(大西智也、井上みなみ)

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