原油3年4カ月ぶり高値 中東緊迫、カギ握るイラン
商品部 久門武史
中東情勢の緊迫で原油価格が上昇し、約3年4カ月ぶり高値をつけた。米国がシリアへの軍事攻撃に踏み切るとの警戒感が拡大。11日にはサウジアラビアに隣国イエメンからミサイルが撃ち込まれたと伝わり、原油供給が滞る可能性が意識された。分かりにくい中東情勢をひもとく鍵の1つは中東の大国で有力産油国のイランだ。
ニューヨーク市場の原油先物価格は日本時間12日午前の時間外取引で1バレル67ドル台。11日は一時67ドル台半ばに迫り、2014年12月以来の高値となった。
トランプ米大統領は9日、化学兵器使用の疑いがあるシリアのアサド政権に対し「48時間以内に大きな決断をする」と発言。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は11日まで3日続伸し、前週末に比べ8%上がった。
シリア自体は大きな産油国ではない。だが「米国の軍事行動で中東全体が不安定化するとの懸念が市場で高まった」と石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストは指摘する。アサド政権の後ろ盾であるイランとの対立激化を招くからだ。
11日にはサウジアラビアの首都リヤドなどに向けてイエメンの反政府武装組織「フーシ」が弾道ミサイル3発を発射し、サウジが迎撃したと伝えられた。石油関連施設を狙っているとの懸念が浮上した。「フーシを支援しているのはイランだ」とサウジは批判している。
イランは米国と敵対し、サウジは米国の同盟国だ。米国とイランのこれ以上の関係悪化は、ただでさえ複雑な中東の勢力図を揺さぶる。こうしたなか米国がシリアへの軍事行動に出た場合、市場が注目するのはその規模だ。「攻撃が限定的なら原油はいったん下がる可能性がある」(野神氏)との声がある。
一方、5月12日にはトランプ米大統領がイラン核合意で解除された対イラン制裁を再開するかを判断する期限がやってくる。再び制裁を科すとなれば、イラン産原油の輸出が減り、相場を押し上げるだろう。やはり米国とイランの関係がカギを握る。
間もなく夏のガソリン需要が増え、原油の需給は引き締まる季節に入る。強気材料が重なる5月を前にして「利益確定売りが出ても買われやすい。1バレル70ドルを超す可能性もある」(野村証券の大越龍文シニアエコノミスト)との声が出ている。