2018年9月24日(月)

パウエルFRB、減税と関税の板挟み

2018/4/12 12:09
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 【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が11日公表した3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨からは、パウエル議長による新体制が、大型減税と輸入制限という2つの政策で迷い始めている様子がみえる。「物価上昇に自信を深めた」とFOMCには利上げ加速論も浮かぶが、トランプ政権が仕掛ける貿易戦争が大きなリスクになる。

 2月に就任したパウエル新議長は3月20~21日のFOMCでいきなり利上げを決断した。11日公表した同会合の議事要旨でも参加者は「景気見通しはこの数カ月で強まった」と主張。数人は「今後の利上げはやや速めるのが適当だ」と引き締め加速に傾いていることも鮮明になった。

 ただ、議事要旨を詳細に読み解くと、むしろFOMC内の先行き不安がにじんでくる。

 「鉄鋼とアルミニウムの関税引き上げがどういう結果をもたらすか、企業関係者には不安の声がある」

 「農業セクターからはとりわけ報復合戦の懸念が寄せられている」

 米政権は3月初旬、鉄鋼・アルミの関税を引き上げる輸入制限を決定し、同月下旬には500億ドルの中国製品に関税を課す対中制裁案も表明した。FOMCではトランプ大統領の強硬的な通商政策を巡って意見が飛び交い「関税引き上げによる影響は大きくないが、報復合戦になれば米経済の下振れリスクになる」と結論づけた。

 FRBが懸念するのは、企業経営者の心理悪化だ。FRBは2017年末に成立した大型減税が企業投資を後押しし、米景気が一段と上向くと見込んでいた。中国など貿易相手国との摩擦が強まれば、企業の投資意欲は一転してしぼみ、利上げシナリオの前提が狂う。

 議事要旨からは、大型減税の効果を巡っても意見が割れていることが分かった。FOMCは「税制改革は今後数年の生産高を大きく押し上げそうだ」との見方を示し、18年の実質経済成長率の見通しも2.5%から2.7%へと引き上げた。

 ただ、一部の参加者は「財政効果がいつ、どのくらい表れるのかは不透明だ」と指摘した。米経済は失業率が4.1%まで下がるなど完全雇用に近く、大型減税による景気押し上げ効果が限られるためだ。財政悪化と金利上昇を不安視する声もあった。

 トランプ政権は大型減税によって企業投資を高め、潜在成長率を3%に引き上げると主張する。ただ、FOMCが示した潜在成長率は1.8%と従来見通しと同じ。減税で一時的に景気は上振れするが、経済の実力そのものが大きく高まるとは見込んでいない。

 3月の消費者物価は、エネルギーと食品を除くコア指数が1年ぶりに2%台に到達した。物価の基調は上向いており、FRBの利上げシナリオを後押しする。ただ、貿易摩擦で市場には景気不安が浮かび、長期金利は再び頭打ちとなった。

 米10年物国債利回りと2年債利回りの差は0.4~0.5ポイントに縮まった。長短金利差がマイナスになると不況の入り口とされる。利上げ加速に傾くFRBだが、市場には拙速な金融引き締めへの警戒がにじむ。

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