非核化の手法が焦点に 米「リビア式」視野
北朝鮮は反発必至

2018/4/9 20:10
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【ワシントン=永沢毅、ソウル=恩地洋介】トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長による初の首脳会談で、北朝鮮側が非核化を話し合う意向を伝達したことが分かった。協議への前向きな姿勢と見る向きもあるが、焦点となる非核化の手法では米国は圧力でリビアに核放棄を決断させた成功例を念頭に置く。北朝鮮は「段階的な非核化」を主張し、米朝間の隔たりは依然大きい。

「金委員長は朝鮮半島の非核化について議論する意向がある」。米政府高官は8日、水面下の米朝協議で北朝鮮側の意向を確認したと明らかにした。首脳会談に関して米朝間での協議が明らかになるのは初めてで、非核化の意思を米側に伝えたのも初めてだ。

とはいえ米国内では楽観視する向きは少ない。現地時間の9日には対外強硬派のボルトン元国連大使が安全保障担当の大統領補佐官に就任する。ボルトン氏はかねて北朝鮮に関し「リビア方式」による非核化を唱えてきた。完全で検証可能かつ不可逆的な核放棄(CVID)を先行し、核放棄を確認して初めて経済制裁を緩和し国交正常化に至る手法だ。

リビアのカダフィ大佐は2003年、米英両国との秘密交渉を経て、核を含む大量破壊兵器の放棄を宣言した。国際原子力機関(IAEA)の核査察を受け入れ、核開発に関するすべての活動の公開や、射程300キロメートル以上の弾道ミサイル廃棄に応じた。米などの経済・軍事的圧力による国際的孤立を回避しようという力学が働いた。

しかし北朝鮮はリビアの事例を「失敗の教訓」と見る。カダフィ氏は11年、米欧が支援する反政府勢力によって殺害された。朝鮮労働党機関紙、労働新聞は昨年10月に「米国の誘惑と軍事的恐喝によって銃床を下ろすことが、どれほど残酷な結果を招くかはイラクとリビアの悲劇的現実が物語る」と指摘した。

金正恩氏は3月下旬の中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談で、中国が議長を務める非核化の議論の枠組みである6カ国協議に復帰する意向を伝えた。米主導による「リビア方式」を警戒し、中国を巻き込んで段階的な核放棄を探る意向との見方が多い。

もっともリビアの核開発計画は核実験の前段階。それと比べ、核が完成寸前にある北朝鮮の核放棄手続きはより複雑とみられる。27日の南北首脳会談で非核化宣言をめざす韓国政府内には「非核化の履行は、経済制裁の緩和も含めて段階的に進めるしかない」(大統領府関係者)との意見が出始めている。

リビア以外に核放棄した事例では、ソ連崩壊後に旧ソ連の核を引き継いだウクライナの事例がある。安全保障の覚書を米ロなど大国と結ぶことと引き換えに核をロシアに移送。北朝鮮が望む体制保証の見返りとして核放棄を段階的に進める方式に近いとの見方がある。

一方、南アフリカは自発的に核放棄を決断した事例だ。1989年に就任したデクラーク大統領はアパルトヘイト(人種隔離)に対する国際的な圧力の回避や、周辺国の共産主義勢力による脅威が減退した事情を背景に核の撤去を進めた。

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