ドイツ銀行、クライアンCEO「解任」
落ちたブランド、迷走止まらず

2018/4/9 20:00
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【ブダペスト=石川潤】ドイツ銀行は8日、ジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)の事実上の更迭を発表した。欧州の名門投資銀行は3年連続の最終赤字に苦しみ、ブランド力の低下と収益減少の連鎖から抜け出せないでいる。後任にはたたき上げでリテール部門を指揮してきたクリスティアン・ゼービング氏を指名したが、再浮上のきっかけをつかめるかは予断を許さない。

8日深夜、ドイツ銀行はクライアン氏の退任を明らかにした。「CEOとして比較的短い在任期間にかかわらず、クライアン氏はドイツ銀行のほぼ150年の歴史の中で重要な役割を果たしてくれた」。監査役会のパウル・アハライトナー会長は発表文に感謝の言葉を寄せた。これを額面通りに捉える向きは少ない。

クライアン氏の後任選びは少なくとも2週間前から始まっていた。複数の欧州メディアによると、アハライトナー氏が数名の欧州の著名バンカーにCEO就任を打診したが、迷走する名門銀行の再建という重い役割に二の足を踏む候補者が多かったという。

クライアン氏は当初、退任の「うわさ」の否定に動いた。従業員にはこれまで進めてきた路線を継続すると改めて約束した。ただ、いっこうに浮上の兆しをみせない収益を前に、「退任は時間の問題」との見方が行内外で強まっていた。

退任の直接のきっかけになったのが、2月に発表した3年連続の最終赤字だ。2017年度の赤字には米国の税制改正の影響という技術的な面もあった。それでも、投資銀行部門を中心に収入の減少に歯止めが掛からず、再建の柱であるリストラも必ずしも計画通り進んでいない点が株主にショックを与えた。

ドイツ銀行は17年にクライアン氏のもとで80億ユーロ(約1兆円)の資本増強に踏み切っている。過去の不正取引の和解金などで傷んだ財務体質を一気に改善させる狙いだったが、株主構成も大きく変わった。今回の解任劇では株主がアハライトナー会長に強い圧力をかけたとされる。収益のV字回復を期待する海外投資家らが株主に加わったことが、クライアン氏の退任を早めた面もある。

新CEOに指名されたゼービング氏を取り巻く環境は厳しい。ブランド力の低下は有能な人材の確保を難しくし、投資銀行部門の収益低下にますます歯止めを掛けにくくする。欧州中央銀行(ECB)の利上げは19年以降になる見込みで、超低金利政策がリテール部門の収益を圧迫するという構図も変わらない。

昨年はコメルツ銀行との合併観測もささやかれたが、収益改善の切り札に欠く状況だ。ゼービング氏が投資家を納得させられる計画を示し、実行することができなければ、名門の迷走がさらに深まる可能性もある。

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