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秋のフルマラソンへ 長期計画をどう立てるか

ランニングインストラクター 斉藤太郎

新年度を迎えて心機一転、目標を定めて取り組まれる方が多いことと思います。今回は長期計画の立て方についてアドバイスしたいと思います。11月末ごろのフルマラソンで好記録を目指す方の場合、4月から計画を進めると目標は約8カ月先。そこを最高潮で迎えるために私が推奨している取り組み方を紹介させていただきます。

来る日も来る日も辛抱強く走るのではなく、次のように期間区分して強化する課題を設けます。整理された要素ごとにレベルを高めていき、最終的にそれらを有機的に組み合わせて快走へとつなげる発想です。

4~6月

<スピード養成、フォーム効率向上狙う>

舗装されていない土や芝生、でこぼこした道を走るメニューも取り入れるといい

この期間はスピードの出るフォームを追求します。400メートルや1キロのインターバル走、タイムトライアルのほかに、5キロや10キロの大会に出場して自己記録更新を目指すのもよいでしょう。

どちらかというと激しい呼吸で追い込んで走る内容が多く、フルマラソンのフォームと比較すると、動きは速くて大きなものになります。スピードを身につけるとともに、疲れにくいフォーム、スピードを持続できる燃費のいいフォーム、シーズンを通してけがなく走れるフォームを体得します。ここで培ったことは秋以降に控える20~30キロ走などの実戦練習へつながっていきます。

並行して舗装されていない土や芝生、でこぼこした道を走るメニューも取り入れたいところです。柔軟性のあるフォームが養われたり、スピード練習による筋疲労を拭ってくれたりといった効果が期待できます。

7~8月

<土台づくり、実戦練習に耐えられる脚づくり>

最も過酷な気候の季節です。ここではスピードを求める練習は一旦避けることに。なるべく涼しい時間を選んで練習します。あまりタイム(ペース)は気にせず、低スピードのランニングに取り組みます。ウオーキングを挟んでも構いません。あくまで長時間持続させることを心がけます。週末は山登りなどもよいでしょう。

着地時には片足で体重を支えますが、ゆっくり走るほど支えている時間が長くなります。これを反復することで強靱(きょうじん)な足腰が培われ、次の工程であるレース想定ペースでの実戦練習や、間隔を詰めて取り組む高負荷練習にけがなく太刀打ちできるたくましさが養われるのです。

9月上旬

<夏の疲労抜き>

暑さの中で頑張ってきた体を一旦休めてあげます。

9月中旬~11月

<実戦練習>

少しずつスピードを上げていきます。「漸進性」と呼びますが、涼しくなるにしたがって段階的にペース設定を上げ、距離を伸ばします。レース想定ペースで長く走る練習へと発展させていく工程です。たとえば20キロのレースペース走。練習の一環でハーフマラソンもこの時期に数回取り入れたいところです。「このくらいのペースならフルマラソンを走りきれるかな」という感覚を身につけていきます。

明確に「サブ3」「3時間30分」「4時間を切りたい」などの目標がある方は、それぞれ1キロあたりのペースを4分15秒、4分55秒、5分40秒といった意識で取り組み、「できた」「できなかった」と判定を重ねていきます。1本のポイント練習の緊張感が高まります。

11月中旬~下旬

<調整期間>

体に負荷をかけることで蓄積した疲労を抜きます。ただし、練習量を極端に落とすとスタミナが目減りしてしまうことがあります。芯からの疲労は抜くけれども、スタミナは維持する。このさじ加減をいかにうまくするかがマラソン調整の奥深いところです。

ターゲットとなる大会のエントリー受付がまだ先でも、必要な情報はゆとりを持って集めよう

以上のように期間を区切り、それぞれ強化する課題を設けて取り組むやり方は「期分け」と呼ばれます。

近年では10月末あたりからメジャーフルマラソン大会が開催されるようになりました。今年に関しては10月21日には「ちばアクアラインマラソン」。翌週の10月28日には横浜マラソン、金沢マラソン、富山マラソン、水戸黄門漫遊マラソンと目白押しです。このあたりのレースを模擬試験のように1本走り、11~12月の大会をメインに据える方もいます。ご自身の生活とのバランスを考慮して、計画に柔軟性を持たせてください。

計画作成の手順

(1)まず大きな目標、メインレースを決める

フルマラソンへのターゲットを定めます。エントリーの受付がまだ先でも、必要な情報はゆとりを持って仕入れておきましょう。

(2)通過点レース

9~10月(メインレースから2~1カ月前)のハーフマラソンにエントリーします。起伏の激しいハードなコースも好ましく、フルマラソンに「30キロ走+ジョギング」といった走り方で出場するのもよいでしょう。

(3)残った隙間期間

ご自身の練習と並行して、イベントやクラブ主催の練習会、ランニング仲間と取り組む20~30キロ走などで埋めていきます。

このあたりのスケジュールをどう立てるかのセンスが結果を大きく左右します。イメージとしては、まず大きな積み木を置いて助走距離を検討します。次に、その間に適度な間隔をとって小さな積み木を挟み込みます。さらにできる隙間は休養日などとなります。

練習レースとわかっていても、周りのランナーに刺激を受けてつい頑張ってしまいがち。ただ、それでは体が疲弊します。自制心を利かせ、アクセルの踏み方にゆとりを持つ走り方が求められます。練習レースの全てにおいて好タイムを狙ってはいけません。

毎週のようにレースに出る計画を立て、それらに備えて距離を落として調整練習をすると総合的な練習量が減り、フルマラソンを走りきるスタミナが低下する恐れがあります。走り込みをしながら、練習量を落とすことなく臨むレースを大切にしてください。

参考例としては、ハーフマラソンでは本命のフルマラソンの想定ペースを守り、ペースアップを我慢して走りきる。フルマラソンでしたら、25~30キロの距離を想定し、その後はファンランという形。または1キロあたり15~30秒ほどレース想定より遅いペースで、最後までペースアップせずに走りきる形などがあります。

初めはどうしても頑張ってしまい、失敗しがちです。結果として調子のピークを練習レース(通過点レース)で終えてしまうこともあります。このあたりはまた秋にでもお話しできればと思います。何度か試しながら練習レースのコツをつかんでみてください。

たとえば「1キロ×10本」のメニューといっても、以下のように様々なパターンがあります。

・前日に長い距離を走って疲れている状態で、本数を重ねるごとにペースアップしていく形
・フルマラソン想定ペースで走り、リカバリーを60秒程度とかなり短い周期で取り組む形
・10キロの自己記録更新を目指し、1本ごとにタイムを追求して追い込み、その分リカバリー間隔は3分ほどという形

そもそも「ペース設定は○分、リカバリーは△分」といった誰にも当てはまる公式は存在せず、そのときの目標や練習の流れ、体調に応じて設定をコントロールすべきだというのが私の考えです。目標レースが近づくほど練習メニューの焦点はくっきりと絞られてきます。時間的にゆとりがある今だからこそ、2018年シーズンのレースプランを時間をかけて練ってみてはいかがでしょうか。

<クールダウン>自分に課す「最低限」のノルマ

自分に課す「最低限」のノルマはフルマラソンでも重要(筆者)

プロ野球が開幕しました。例年、優勝チームの勝率はだいたい6割ちょっとです。この域に達するための最低限の目安に、連敗をしないことがあるかと思います。連敗をしなければ5割を下回ることはまずありません。実際には全く連敗をせずにシーズンを乗り切ることはないでしょうが、極力連敗を喫しない。これが大きなポイントかと思って見ています。

自分に課す「最低限」のノルマはフルマラソンでも重要だと思います。当たり前にそんな課題意識がある人に対し、うまくいかない人はボーダーがあやふやで、流されやすい一面を感じます。「連敗しない」と似た意識では「走らない日(週)を続けてつくらない」「付き合いが重なっても走ることで汗を流す」といったことが「最低限」に当たるでしょうか。

ペースランナーとして終盤に声をかけるアドバイスに「1キロを○分△秒でいけばサブ3でゴールできます」というものがあります。サブ3ペースランナーを担当した先日の佐倉マラソンでは序盤のタイムの貯金があり、残り35キロからは「1キロ4分25秒で行けばクリアできますよ」「ここから先、4分30秒かからないことです」。そんな声掛けをしていました。

新しいシーズン。自分に最低限のノルマを課してみるのもいいかもしれません。

 さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)、「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)、「ランニングと栄養の科学」(新星出版社)など。

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