動き出す会津データバレー構想 市民の情報が基盤

2018/4/10 6:30
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復興から再生へ。福島県会津若松市が掲げる会津データバレー構想では、オープンデータを推進力にし、新たなスタートアップ、イノベーションを勃興させる考えだ。東京から交通機関で3時間近くかかる。地の利は良いとはいえないが、猪苗代湖、磐梯山があり盆地に美しい景色が広がる。東日本大震災時に浜通り・中通りの多くの被災者を受け入れた開放的な土地柄もある。

会津若松市の室井照平市長は「情報通信技術を核に地方創生モデルをつくる」と意気込む

会津若松市の室井照平市長は「情報通信技術を核に地方創生モデルをつくる」と意気込む

オープンデータの担い手は市民だ。市民が家庭で使うエネルギー消費量、交通機関を使ったログ、医療や教育のデータ、インバウンドを含む観光データなど広範囲に渡る。こうしたデータをつなげ市のサービス向上、行政コストがかからないスマートシティーも実現する。

きっかけは東日本大震災。会津若松市も他の地方都市と同じように人口減が差し迫る。人口は12万人強と10年前から5%減った。生産年齢人口は約9%、主力産業である電子部品製造従事者は約56%もそれぞれ減った。「情報通信技術(ICT)を核に地方創生モデルをつくりたい」(会津若松市の室井照平市長)

世界的なコンサルティング会社、アクセンチュアのデータセンター進出が追い風となった。データがあっても使いこなせなければ宝の持ち腐れ。データを分析できるアナリティクス人材を養成した。そもそも高度なコンピューターサイエンスを学ぶ会津大学の存在もある。地元企業、スタートアップ、市を結び基盤をつくった。

念頭にあるのは医療産業のクラスター(集積)で知られる「メディコンバレー」。デンマーク、スウェーデンは住民の医療にかんするビックデータをオープンにし、世界的な製薬大手、医療機関が次々と押し寄せた。医療研究で成果を上げ、両国に占める国内総生産(GDP)の2割を稼ぎ出す。地域住民は医療負担を軽減されるメリットがある。

会津若松市もメディコンバレーにならい、オープンデータを使ってもらい、会津若松発スタートアップの育成、大企業の誘致をもくろむ。2019年に敷地面積が約9500平方メートルの専用オフィス棟を、鶴ヶ城にほど近い立地に完成させる。

会津若松市の人口は12万人で、日本全体のちょうど1000分の1だ。「実証フィールドとして最適。これを1000の成功につなげれば、日本の大きな課題を解決できる」(アクセンチュアの中村彰二朗センター長)

震災から7年、ようやく理想のかたちに近づく。「ここは終着点でない。まだまだこれから」。こう話す室井市長みずからは起業経験がある。スタートアップの酸いも甘いも知る。

会津若松市のかつての人材育成の教えを示すのが「什の掟(じゅうのおきて)」。そのひとつがドラマでも有名になった「ならぬことはならぬものです」。市内でいたるところでこの言葉を目にする。色んな解釈があるようだが、不条理、不合理にも不退転の決意でのぞむという意味も含む。

動き出した会津データバレー構想。これまではあくまでも復興といった面も強かった。スタートアップ、大企業を引き寄せ、日本、そして世界標準となるモデルをつくれるか。それぞれが一歩も引かぬ熱意や忍耐力を試されるのはこれからだ。

(映像報道部 森園泰寛)

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