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強権政治、欧州を分断 ハンガリー議会選で与党勝利

(更新)

【ブダペスト=石川潤】8日投開票のハンガリー議会選挙(一院制)で与党が勝利し、オルバン首相の続投が確実になった。メディアや司法を抑えつけて権力基盤を固めるオルバン流の強権政治は、中・東欧を席巻し、西欧のポピュリズム(大衆迎合主義)勢力にも影響を広げている。自由と民主主義を重んじてきた欧州連合(EU)の亀裂が深まっている。

選挙管理委員会によると開票率98%時点で、オルバン氏の与党連合は定数(199)の3分の2を超える133議席を確保する見通しだ。難民流入を「イスラムによる攻撃」と呼び、「ハンガリー・ファースト」を唱える指導者を国民が信任したことになる。

オルバン氏礼賛の声は国外にも広がる。「国家の尊厳と自由はオルバン氏と共にある」。選挙直前の6日、ブダペストを訪問したポーランドの最高実力者、カチンスキ氏はこう持ち上げた。オルバン氏も「我々には祖国を守り抜くという共通の目的がある」と語り、両国の蜜月を強調した。

EUの移民政策や統合強化に反対し、自分たちの国を守る――。ポーランドとハンガリーは独仏の対抗軸として急接近している。ポーランドは司法の独立性を損なう制度改革でEUに制裁を突きつけられたが、オルバン氏がポーランド支持を表明してけん制するなど、連携も目立つ。

両国以外でも、オーストリアでは昨年12月に極右の自由党が政権入りし、チェコでは親ロシアのゼマン大統領が再選を決めた。オランダ自由党のウィルダース党首、仏国民戦線のルペン党首らのポピュリズム勢力も、オルバン氏の政権運営に熱視線を送っている。

オルバン氏は国境にフェンスを築いて難民を阻止し、人種差別主義者と受け取られかねない際どい発言で移民反対を繰り返してきた。メディアや司法への影響力を強め、与党に有利とされる選挙制度改革で権力の安定も進めた。民主化には明らかに逆行しているが「非リベラル民主主義」だと悪びれない。

攻撃の矛先はハンガリー出身の米投資家、ジョージ・ソロス氏にも及ぶ。ハンガリーの民主化を支援してきたソロス氏に対し、オルバン氏は海外から資金援助を受ける非政府組織(NGO)を締め付ける「ソロス阻止」法案を国会に提出した。選挙戦では野党がソロス氏と結びついていると決めつけ、自分とソロス氏のどちらを選ぶかと国民に迫った。

それでも国民がオルバン氏を支持するのは、共産主義体制の崩壊やグローバル化に翻弄されてきた国民が、安定をもたらす強い指導者を欲していることが大きい。EU加盟の効果もあって経済は好調を維持しており、安定政権をあえて覆そうという動きは広がりを欠く。

欧州はオルバン氏とどう向き合うべきか。強権政治が勢いを増した背景には、2015年の難民の大量流入で欧州が大混乱に陥ったことがある。移民の増加やグローバル化といった人々の不安にEUが十分対応してこなかったことが、ポピュリズムにつけいる隙を与えたともいえる。

民主化に逆行しているとハンガリーを批判するだけでは、オルバン氏の勢いは止まらない。EUは次期中期予算でハンガリーやポーランドに揺さぶりをかける構えだが、両国の民意を味方につけられるかは不明だ。自由や民主主義といった西側価値観の「最後のとりで」とも呼ばれる欧州だが、内実は危うい。

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