2018年6月19日(火)

びわ湖ホール GWに新音楽祭(もっと関西)
カルチャー

コラム(地域)
関西
2018/4/6 17:00
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 大津市のびわ湖ホールが5月3~5日、音楽イベント「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」を開く。昨年で最後となったフランス発の音楽イベント「ラ・フォル・ジュルネびわ湖」に続く大型連休の看板公演として、野外オペラやベテラン音楽家らのリサイタルを柱ににぎわいを生み出す。開館20年の節目に、これまで培った企画力を新たな音楽祭に生かす試みだ。

■学園祭の楽しさ

「ディドとエネアス」を野外オペラで取り上げる(3月、演奏会形式での公演の様子)

「ディドとエネアス」を野外オペラで取り上げる(3月、演奏会形式での公演の様子)

 音楽祭は指揮者で同ホール芸術監督の沼尻竜典が総合プロデュース。出身校の桐朋学園の高校・大学で学園祭実行委員を6回も務めたという沼尻は「フォル・ジュルネのフォーマット(形式)を利用するのでなく、学園祭の楽しさを持ってくる」と強調する。

 音楽祭のテーマは歌劇「ロメオとジュリエット」のアリアのタイトルから「私は夢に生きたい」を引用した。作曲家などの縛りを設けず、出演者に得意の演目、演奏したい演目をのびのび楽しく演奏してもらいたいという意図だ。“お祭り”の高揚感や何が飛び出すか分からない意外性を期待させる。

 最大の目玉が琵琶湖畔の立地を生かした野外オペラだ(4、5日)。イタリア・ヴェローナでは名物だが、びわ湖ホールでは初の試みとなる。宵の口からの光の移り変わりを天然の舞台装置として利用。「風向きによって聞こえ方が変わるなど、独特の趣がある」と沼尻は心を躍らせる。

 演目はパーセル「ディドとエネアス」。専属の声楽家集団であるびわ湖ホール声楽アンサンブルが出演する。同じ演目で3月に演奏会形式で上演したが、今回はもちろん演技付き。沼尻は「将来は湖の上にステージを組んでオペラをやりたい」と先の先まで夢を膨らませる。

 小ホールで1日8公演のリサイタルも注目だ。4日に「円熟を聴く」と題し、藤原真理(チェロ)や野平一郎(ピアノ)、福田進一(ギター)など日本を代表する演奏家が登場する。沼尻は「若くて才能ある演奏家は売り出しやすいが、良い味が出てくる人たちが置き去りになってしまう傾向が世界的にある。音楽祭をカウンターパンチの機会にしたい」と狙いを語る。5日は「歌手たちの競演」と銘打ち、森谷真理(ソプラノ)や水口聡(テノール)らが歌声を披露する。

 大ホールは4、5日、沼尻指揮の京都市交響楽団と、桂冠指揮者の大植英次がタクトを振る大阪フィルハーモニー交響楽団が登場する。ホール外でも4~5月にかけ、滋賀県各地のホールやショッピングセンターなど約10カ所で関連公演を開く。主な出演は声楽アンサンブルのメンバーや約50人の卒業生だ。

 昨年まで8年間続けたフォル・ジュルネは、フランス・ナントで1995年に始まった世界的な音楽祭から派生した企画。強い集客力を持ち、国内では2005年開始の東京を皮切りに金沢、新潟、大津、佐賀・鳥栖に広がった。10~17年に開催した大津はのべ30万人を集めた。

 しかし、東京が規模を広げる一方、他の地方都市は財政負担を理由に連鎖式に中止が続く。13年を最後に鳥栖が撤退し、17年には金沢が自前の新たな音楽祭に移行。新潟も今年から休止した。通常、海外から音楽家を招く費用は各都市で分担するため、ある都市が撤退すると他の都市のコストが重くなりやすい。びわ湖の場合、フォル・ジュルネが自主事業とみなされず、国の助成金を得られないとの事情もあった。

■開館20年の節目

 昨年11月、行政や経済団体などで構成する音楽祭推進委員会の会合で、山中隆館長は同ホールの企画力の高さをアピールした。「『創造する劇場』として、独自の音楽祭を開催したい。そのための十分な力は備わってきた」。びわ湖ホールは今年、開館20年を迎える。フォル・ジュルネの終了を好機と捉えている。

 これまで、ワーグナーの大作楽劇「ニーベルングの指環(ゆびわ)」の新制作など意欲的な企画に取り組み、集客も好調を維持してきた。20年間の取り組みが確かな自信につながっている。新たな音楽祭が「創造する劇場」としての地位を固める試金石となる。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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