2018年7月22日(日)

米中 報復合戦の瀬戸際 トランプ氏、危うい取引外交

2018/4/6 14:00 (2018/4/7 0:45更新)
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 【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中の貿易摩擦は報復合戦の瀬戸際の様相を呈してきた。トランプ米大統領は5日、新たに1000億ドルの中国製品の関税を引き上げる対中追加制裁の検討を指示。中国も6日に対抗措置の構えをみせた。両国は水面下で発動回避策を協議するが、トランプ流の取引外交は危うさを増す。

 「中国は米国の農家と製造業者を傷つけることを選んだ」。トランプ氏は5日、中国が大豆など106品目の米国製品に関税を課す対抗措置に出たことを批判。米通商代表部(USTR)に追加制裁の検討を指示した。

 USTRは3日、中国の知的財産権侵害を批判し、産業ロボットなど1300品目の中国製品に25%の関税を課す制裁リストを公表したばかり。対象は中国からの輸入総額(約5000億ドル)の1割分で、さらに1000億ドルを積み増せば輸入の3割に追加関税を課す極めて異常な事態となる。

 トランプ氏の追加制裁の検討指示は、中国にとって予想外だったようだ。商務省報道官は6日夜に緊急記者会見し、「米国が新たな制裁リストを公表すれば迷わず反撃する」と警告した。

 中国は日本の「お彼岸」にあたる3連休中で、いつもは直ちに出る同省の声明は6日午後になってからだった。声明では「同じ強さ、同じ規模で報復」というこれまでの表現が消え「総合的な対応策を取る」との文言が入った。仮に米国からの輸入品1500億ドル分に関税をかけるとなると17年の輸入全額になる点を考慮したようだ。「総合的」となると、車の不買運動なども視野に入る。

 トランプ氏が一段と過激になっているのは、11月の中間選挙が近づいているためだ。現在は上下両院とも共和党が多数を占めるが、下院で過半数を割れば、ロシア疑惑などを巡る弾劾裁判のリスクが浮上する。

 トランプ氏は「中国製品に45%の関税を課す」といった対中強硬策で大統領選を勝ち上がった。選挙参謀だったナバロ通商製造政策局長を再び側近として置き、貿易問題をかき回す。実際、米世論調査では昨年12月に35%まで下がった支持率が3月には40%までじわりと持ち直している。

 もっとも、米国は制裁発動まで2カ月程度の猶予を置き、水面下で中国と妥協策を探っている。トランプ氏は中国に対米貿易黒字を1000億ドル減らす是正策を求めており、ムニューシン財務長官らを月内にも北京に派遣する検討にも入った。

 中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席も各国の経済人らが集う「博鰲アジアフォーラム」で10日に演説する予定。18年は改革開放から40周年でもあり、トランプ政権も意識した市場開放策を表明する公算がある。

 だが交渉が決裂すれば報復関税の発動の応酬で米中は共倒れとなりかねない。米国が公表した1300品目は中国に生産拠点が集中するハイテク製品は巧みに避けた。1000億ドルの追加制裁でハイテク製品なども対象になれば、中国の組み立て工場は大打撃を受け、習指導部が最も嫌う社会不安が起きかねない。

 米経済も傷む。中国製品の値上がりは低中所得層を直撃し、むしろ政権のマイナス材料となる。中国の報復措置で航空機などの輸出産業も打撃を被る。金融市場も混乱し、好調な米景気は腰折れしかねない。

 USTRは知財侵害を巡って中国を世界貿易機関(WTO)に提訴しており、日本は米国に同調する形で第三国として協議に参加する意向だ。欧州連合(EU)も同じ構えだ。ただトランプ氏の過激策は日欧など貿易相手国に嫌米感情を植えつける。中国はWTOルールの順守を強調し「自由貿易の守護者」として振る舞う。米国と日欧の間にくさびを打つ狙いだ。国際協調にヒビが入れば、中国の知財侵害という根源的な問題をかき消しかねない。

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