/

門戸は広く開けておく

森ビル ヒルズの肖像ご自由に

東京のランドマーク、六本木ヒルズ(東京・港)――。

メディア企画部部長の矢部俊男(53)のもくろみは的中した。2003年4月に開業した六本木ヒルズのプロモーション映像「東京スキャナー」。東京湾も含め東京全体を描きつつ、最後の

ギリギリで六本木ヒルズをチョロだしする映画監督、押井守との奇策があたった。露出の時間を絞り込むことで返って印象が鮮明になり、六本木ヒルズと東京が明確に結びついた。

「東京のシンボルというイメージをうまく浸透させられた」と矢部。国内だけでなく海外からも引き合いがあり結局、1本3000円だったが「東京スキャナー」は約7000本売れた。「使いすぎ」と批判された制作費の2000万円をすっかり回収してしまった。

実はこうしたことが経営の強化につながる。

独立系の森ビルの場合、財閥系の大手不動産会社に比べテナント誘致は2倍も3倍も苦労する。財閥系不動産会社にとってほんの一部にすぎない海外テナントの誘致も森ビルにとっては死活問題。プロモーション映像を通じて海外で六本木ヒルズを知ってもらえれば将来のテナント誘致の呼び水になる。

「だからこそ、門戸は広く開けておく」と矢部。扉さえ開けておけば誰かが入ってきて広めてくれる。「いずれ巡り巡って『森ビル』の名前が広がっていく」

43階のフロアいっぱいに広がる1000分の1の東京の都市模型はその典型だ。矢部が20年手塩にかけ作り込んできた渾身(こんしん)作だが抱え込んだりはしない。「仕事に役立ててもらえるなら」と希望があれば業界の垣根なくできる限り公開した。

短編映画「巨神兵東京に現わる」の時もそう。「風の谷のナウシカ」に登場する巨神兵を用いたスピンオフ作品だが、監督、樋口真嗣たちから「東京の街を俯瞰(ふかん)できる都市模型を見学したい」と要請があると快く応じ、自由に撮影することも認めた。矢部の都市模型は、映画の中で「東京」を表現するための材料となっている。

こうなると噂が広まるのは早い。「森ビルは映画に理解がある」。東京を代表する建物の場合、映画のシーンに少しでも映りこむとお金を要求するケースも多い。しかし、森ビルはそうはしない。「それなら森ビルの建物を使おう。クレームをつけないから」

新海誠監督による日本の長編アニメーション映画「君の名は。」では六本木ヒルズが何度も登場する。例えば主人公がデートするのは六本木ヒルズの展望台。映画が中国でヒット、デートのシーンが中国の若者の間でも浸透し六本木ヒルズは「君の名は。」ファンの聖地巡礼の欠かせないスポットとなった。

「東京=ヒルズ」。そんな図式が「もっともっと広まらないか」。矢部はそう思っている。=敬称略

(企業報道部 前野雅弥)

[日経産業新聞2018年4月2日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン