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クラシック幕開け 牝馬1強、牡馬は一気に混戦

4月8日の桜花賞(阪神・芝1600メートル)を皮切りに、今年の3歳クラシックが幕を開ける。2017年はディープインパクト産駒の不振が目立つ一方、クラシックには縁遠かった藤沢和雄調教師がオークス、日本ダービーを制するなど、話題も多かった。今年は牝馬、牡馬ともに無敗の前年2歳王者が年明け初戦を快勝したが、皐月賞最有力と見られたダノンプレミアムは直前で出走回避。にわかに混戦の様相となった。また、血統面ではディープ産駒が巻き返す一方で、現3歳勢が初年度となる新種牡馬の産駒が、ライバルとして名乗りを上げている。

無敗の戴冠なるか?

桜花賞へ調整するラッキーライラック。無敗での戴冠はなるか=共同

間近に迫った桜花賞では、17年の阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神JF=G1)を制したラッキーライラック(父オルフェーヴル、栗東・松永幹夫厩舎)が最有力視される。昨年8月に新潟で新馬戦を勝つと、2戦目のアルテミスステークス(東京・G3)、阪神JFを無傷で突破し、最優秀2歳牝馬に選定された。今年初戦となるチューリップ賞(阪神・G3)は、阪神JF、桜花賞と同じ舞台で、ラッキーライラックは前回比10キロ増の体重494キロで出走。10頭中3番手の好位置から楽々と抜け出し、リリーノーブルとマウレアという阪神JFの2、3着馬を寄せ付けず、2馬身差で快勝。タイムは1分33秒4で阪神JFの走破タイムを0秒9短縮した。

ここまでの足取りは昨年のソウルスターリングとよく似ている。同馬は2戦目がオープン特別のアイビーステークス(東京)だったが、無傷でチューリップ賞まで突破し、同レースで記録を大きく縮めた点も同じだ。ソウルスターリングは肝心の桜花賞で渋った馬場に泣き、初黒星を喫した(3着)が、ラッキーライラックは2戦目が良馬場発表ながら雨で相当に渋った馬場を克服している。その点では無傷の桜花賞制覇が有望といえる。

父オルフェーヴルは1日現在、中央で産駒115頭がデビューして、勝ち星をあげたのは19頭。勝ち馬率16.5%は褒められた数字ではなく、ロードカナロア産駒の35.7%の半分以下だ。実は産駒が走り出す前から、「ホームランか三振か」のタイプという予測はあった。オルフェーヴル自身が現役時代から気性難で、12年の阪神大賞典では「急停止」するなど、粗相も多かった。産駒の勝ち馬率の低さもこうした難しさの表れで、札幌2歳ステークス(札幌・G3)を勝って期待されたロックディスタウンも、3月17日のフラワーカップ(中山・G3)で気性難を露呈して13頭中最下位。だが、ラッキーライラックはレースぶりもソツがなく、父の能力だけを受け継いだ印象だ。

「1強」模様も好素材多く

現状はラッキーライラック「1強」に映るが、他にも好素材は多い。阪神JF、チューリップ賞と桜花賞に向けた主流路線を歩んだ組では、リリーノーブル(父ルーラーシップ、栗東・藤岡健一厩舎)とマウレア(父ディープインパクト、美浦・手塚貴久厩舎)が上位候補。両馬はデビューから2連勝した後、阪神JFとチューリップ賞で着順が入れ替わったが2、3着を占めた。阪神JF2着だったリリーノーブルは、チューリップ賞で際どい2着争いの末にマウレアに後れを取ったが、賞金面で桜花賞、オークスに確実に出走できるため、余裕を残した仕上げも可能だった。その分、上昇の余地を残している。マウレアは賞金加算を狙って2月にクイーンカップ(東京・G3)に出走したが5着。ただ、強行軍を覚悟で臨んだチューリップ賞では2着で、オークスまで出走可能な賞金の確保に成功。レース後は栗東に入り、当日輸送で参戦する。近年の関東馬の成功パターンだ。

関東勢の伏兵候補はまだいる。アーモンドアイ(父ロードカナロア、国枝栄厩舎)は、2戦目の未勝利戦で2着馬に3馬身半差をつけて圧勝すると、年明けに牡馬混合重賞のシンザン記念(京都・G3)で鋭い決め手を発揮して連勝。牝馬路線の主力とは未対戦で、大逆転の期待を背負う。母フサイチパンドラは06年のエリザベス女王杯を繰り上がりで優勝。関西圏への輸送を経験した点も強調材料。美浦勢ではプリモシーン(父ディープインパクト、木村哲也厩舎)もいる。こちらも2戦目に未勝利勝ちの後、年明けにフェアリーステークス(中山・G3)で連勝。2戦目で破ったテトラドラクマ(桜花賞は登録なし)が後にクイーンカップ(東京・G3)を勝つなど、強敵にもまれてきた。480キロ前後の恵まれた馬体を誇るが、3カ月ぶりで初の関西圏となる点が課題になりそう。

ダノンプレミアムは皐月賞もレースの中心とみられたが、出走を回避した=JRA提供

このほか、3月11日のフィリーズレビュー(阪神・G2)組にも注目馬はいる。勝ったリバティハイツ(父キングカメハメハ、栗東・高野友和厩舎)はソツなく立ち回った印象で、むしろ2着のアンコールプリュ(父ディープインパクト、同・友道康夫厩舎)の方が目立った。スタート後、騎手を落とした馬に進路を塞がれ、位置取りを下げる不利があったが、直線でよく伸びた。過去3戦とも426キロと小柄だが、桜花賞向きの決め手がある。

ダノンプレミアムが回避

皐月賞では、昨年の最優秀2歳牡馬で、年明け初戦の弥生賞も勝ったダノンプレミアム(栗東・中内田充正厩舎)が、突然の出走回避。にわかに混戦となってきた。4戦無敗。4戦全て2着馬に1馬身以上の決定的な差をつけていた。皐月賞回避は5日に中内田調教師が発表したもので、理由は右前脚のざせき(ひづめの底部の内出血)だった。今後は栗東に残って調整を進め、日本ダービー(5月27日、東京)を目指す。「速い馬が勝つ」とされる皐月賞で、1600メートルの重賞を楽々と連勝した主役候補が回避。一転してレースは読みにくくなった。

主役候補に押し出された感のあるワグネリアン(父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)は2歳時にG3を含めて3戦3勝の後、弥生賞でダノンプレミアムに0秒2差の2着。弥生賞が初黒星となったが、中位から相手との力関係を測るようなレース運びを見せ、最後の600メートルはメンバー中最速の33秒7を記録(ダノンプレミアムは34秒1)。脚質的に直線の長い東京が向きそうだが、コースを経験して結果を出した点で収穫があった。ディープインパクト産駒は昨年、3歳限定G1で皐月賞のアルアインの1勝に終わっており、今年はワグネリアンに主役の期待がかかる。また、新馬戦、すみれステークス(阪神芝2200メートル)を連勝したキタノコマンドール(栗東、池江泰寿厩舎)も注目の存在。昨年、新設されたクラブ法人で、セリ市場で高額馬を次々に落札したDMM.com傘下の「DMMバヌーシー」の勝ち馬第1号で、馬名はタレントの北野武氏が命名した。気性面に若さを残すが、全姉にG1で2着2回のデニムアンドルビーがいる。

距離との戦いは?

桜花賞路線ではアーモンドアイを送り出したロードカナロアは、皐月賞でも産駒のステルヴィオ(美浦・木村哲也厩舎)が期待を集める。2戦2勝の後、サウジアラビアロイヤルカップ、朝日杯ではダノンプレミアムに完敗。だが、今年初戦のスプリングステークス(中山・G2)は内容こそ辛勝だったが重賞初制覇。皐月賞もクリストフ・ルメール騎手で臨むことが決まった。父の現役時代の印象から距離が課題と思われていたが、ルメールは「2000メートルも大丈夫そう」と話す。血統とは裏腹に、積極的に前寄りの位置で運ぶタイプではなく、皐月賞もいかに馬群をさばくかが課題になりそうだ。

ロードカナロア産駒が全体的に、1800メートル以上の勝ち星が少ないのは当然といえるが、3月31日には阪神芝2000メートルの未勝利をアールスターが勝ち、この距離での初勝利を記録した。同産駒は乗り手の指示に素直に従い、操縦性が高い点が長所。この利点を生かせば、3歳同士の2000メートルなら戦えても不思議はない。

ダノンプレミアムには2連敗。雪辱を期するステルヴィオ(右)=JRA提供

このほか、スプリングステークスでステルヴィオと接戦を演じた末に2着に入ったエポカドーロ(栗東・藤原英昭厩舎)はオルフェーヴル産駒。昨年暮れに新設G1のホープフルステークスを制したタイムフライヤー(父ハーツクライ、同・松田国英厩舎)は、前哨戦の若葉ステークス(阪神・芝2000メートル)で5着と取りこぼしたが、速いペースになれば巻き返しが期待できそう。

距離延長で様相変化も

では、ダービーはどうなるか? 潜在能力では頭1つ抜け出していたダノンプレミアムは、調整が間に合うかどうかが問題だが、とりあえず期間は十分にある。ただし、無事に運んだとしても、2400メートルへの距離延長を懸念する声はあった。何しろ、スピードがありすぎ、レースを重ねるにつれて、気性の前向きさも表に出てきた。加えて、弥生賞からダービーまでは12週と間隔が長く、本当はどこかで1戦挟みたいところ。本番との間隔は3週しかないが、京都新聞杯(5月5日、京都・G2)あたりに出走できれば、見通しが立てやすくなるが……。ワグネリアンにしても祖母が短距離戦の追い込みで鳴らしたブロードアピールで、距離延長に疑問符がつく。

皐月賞をあえてパスした新勢力も現れている。3月24日の毎日杯(阪神、G3・芝1800メートル)を完勝したブラストワンピース(美浦・大竹正博厩舎)は、昨年に3頭のG1勝ち馬を出したハービンジャーが父。目下、3戦無敗で、2戦目に東京2400メートルのゆりかもめ賞を圧勝した。毎日杯では緩いペースの2番手を追走して抜け出し、2着馬に2馬身差をつけた。ハービンジャー産駒は16年までG2も勝てない状況が続いたが、昨年を境にすっかり反転モードに入った。距離延長も問題はなさそう。ロードカナロアやオルフェーヴルよりは2歳上だが、種牡馬の世代交代を告げる1頭なのは確かで、ダービーを勝つようなら、一つの区切りとなりそうだ。

(野元賢一)

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