2018年7月17日(火)

ベビーブームに沸くドイツ 出生数は5年で2割増
移民増と公的支援で 極右は「税負担増」と批判

2018/4/5 17:00
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 【ベルリン=石川潤】出生率の低下が深刻だったドイツが一転、ベビーブームに沸いている。独連邦統計庁によると、2016年の出生数は前年と比べ7%増の79万2千人で、約20年ぶりの高水準となった。同国が受け入れた移民や難民が増えた影響は大きいが、政府の子育て支援など地道な家族政策も実を結んだ。助産師や託児所の不足などの問題を解決し、持続的な動きにつなげられるかが今後の課題になる。

 ドイツの出生数は11年に66万人まで落ち込んでいたが、それからわずか5年で2割も増えたことになる。合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産むと見込まれる子どもの数)も1.59と1970年代以来の水準に回復した。フランスの約1.9に比べればまだ低いが「小さな奇跡」(南ドイツ新聞)とも評される。

 出生数が増えた最大の要因は移民らの増加だ。全体の出生数のうち、母親が外国人の子どもが4分の1近い18万5千人を占める。前年からの伸び率は25%の高水準。全体の7%、ドイツ人の3%を大きく上回っている。

 ドイツは15年以降、内戦が激化したシリアなどから100万人を超える難民や移民を受け入れた。例えば、シリア出身の母親による出生数は14年が2300人だが、15年は4800人、16年は1万8500人と速いペースで増えている。イラクやアフガニスタンからドイツに移り住んだ母親の出生数も急増している。

 こうした移民らはドイツ人よりも多くの子どもをもうける傾向があるため、出生率の上昇にもつながる。ここ数年で目立つ中東からの人だけでなく、その前から労働力不足などを理由に受け入れてきたトルコ、ポーランド、ルーマニアなどの出身者の出生数も高い水準を維持している。

 移民や難民だけが出生数の回復した要因ではない。連邦統計庁によると、子育て支援が拡充されたこともあり、ドイツ人女性の30~37歳での出産が増えているという。

 かつてドイツの家族政策は児童手当などの現金給付が中心だったが、十分な成果に結びついていないとの批判もあった。いまでは現金給付だけでなく、託児所の増設や子育てに合わせた働き方の導入などで仕事と家庭の両立を目指しており、成果が表れはじめている。

 出生数の急増は、助産師や分娩室の不足といった課題にもつながっている。地元メディアによると、陣痛が始まったのに産院から受け入れを拒否されるケースさえあるという。ベルリン州政府は3月、助産師の大幅増員や待遇改善を軸にした行動計画を打ち出した。

 「ベビーブーム? とんでもない」。極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)はフェイスブックで、児童手当でドイツ人よりも移民らの方が多く子どもをつくっていると指摘した。それにより、税負担も「記録的な高さ」だと批判した。

 出生数の増加は国の活力につながるが、子育て支援などを誤れば、貧困や社会の分断を生みかねない。特にドイツ語を話さない家庭の子どもをどう社会に適合させていくかは重い課題だ。足元のベビーブームをどう乗り切っていくかは、メルケル政権の移民政策の評価にも直結しそうだ。

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