2018年4月22日(日)

高齢化社会 銀行の役割
(WAVE)瀧俊雄氏

コラム(ビジネス)
スタートアップ
2018/4/5 13:08
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 3月、日本の各銀行におけるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携方針の公表が出そろった。APIとは自社のシステムに外部企業が接続しやすくする技術仕様のこと。銀行の場合は、口座機能を外部と安全に連携することができる合いカギに相当する。口座情報を外部の家計簿アプリが参照したり、ECサイト上で銀行振替による支払いを行ったりすることが可能となる。

マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長。野村証券で家計行動、年金制度などを研究。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年にマネーフォワードの設立に参画。

マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長。野村証券で家計行動、年金制度などを研究。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年にマネーフォワードの設立に参画。

 銀行での手続きといえば、オフラインならATMや窓口、口座振替用紙へのなつ印が想起される。オンラインではセキュリティーのために使い勝手が犠牲になる側面もあり、例えばアマゾンでクレジットカードを使った購入体験と比べて、見劣りする印象があった。APIであれば、通信経路、事業者および用途の制御により安全性が高まり、銀行口座でも従来とは段違いの利便性を追求することができる。

 APIのようなツールが整備されつつある中、筆者は「フィンテックが日本の高齢化社会におけるお金の諸問題を救う」と真剣に考えている。例えば、離れて暮らす高齢の親を心配する子ども世代が、APIを活用したお金の見守りサービスを経由して、親の口座に異常な支出がないかを確認することができるはずである。

 また、数年分のお金の出入りを分析し、元気なうちは促しづらい難しい遺言書作成を「満足度の高かった遺言書の例」から機械学習されたアルゴリズムが下書きすることも可能だ。

 さらにキャッシュレス化が進めば、高齢者の生活支援を行うためのコストも下がる。すでに介護の現場では、身の回りの世話をするヘルパーさんに電子マネーの形でお金を預けることで、相互不信が生まれない工夫が行われている。

 2025年には認知症患者数が700万人にも達するといわれる中、その支援にかかるコストを技術の力で格段に削減する方法が求められている。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器により、毎日トイレが利用されているか、心拍や寝返りの回数に異常はないか、といったことは確認できる。スマートスピーカーを使えば、高齢者も簡単にECを利用できるようになってきた。10年前には考えられなかったケアが今は可能だ。お金についても、同じ次元を目指そうではないか。

 そこでは銀行はどのような役割を果たすのだろうか。銀行は本来、口座の内容を分析しながら、適切な支出額を提案したり、家のリフォーム、介護ホームへの入居の相談に乗ったりできる。時には厳しく、不足するお金への冷静な認識を家族を含めて会話することもできるはずだ。いざとなったときの緊急手配などは、普段から信頼関係ある相手でなければできない。このような不安の解消は、人工知能が最も不得意なジャンルの一つでもある。

 現在、利用者に代わって成年後見人がインターネットバンキング機能を利用することは、ほとんどの銀行でセキュリティー上の懸念から許容されていない。親の口座で異変がないかを見守りたいだけの子どもにとっても、API活用の余地は限定的だ。まずはこのような一歩目を変えることが求められている。

[日経産業新聞 2018年4月5日付]

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