2018年11月20日(火)

自転車シェアで激変、都市交通のラストワンマイル

CBインサイツ
米巨大ITへの逆風
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コラム(テクノロジー)
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2018/4/9 6:30
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■乗り捨て型の自転車シェアリングがもたらす3つの影響

影響1:他の短距離の通勤・通学手段に取って代わる

自転車シェア各社によると、会員の主な利用目的は通勤・通学だ。モバイクは17年、同社のサービス利用者の間で車の利用が半分近くに減ったことを明らかにした。

こうした状況を受け、配車大手は自転車シェア市場に足がかりを築こうと急いでいる。米ウーバーテクノロジーズはジャンプ・バイクスと都市部の自転車シェア事業で提携。米リフトは米ボルティモア市のバイクシェアプログラムと手を組んだ。中国では、滴滴出行がオッフォと提携したのに加え、経営難に陥っていた小藍単車(ブルーゴーゴー)を買収して独自のサービスにも乗り出した。

提携方法は様々で、ウーバーは提携パートナーのジャンプとブランドを統合したが、滴滴は別々のままだ。

東南アジアの配車大手も自転車シェアに関心を示している。シンガポールでは、グラブが自転車シェアサービス「oBike(オーバイク)」や電動アシスト自転車など複数のサービスを使える「GrabCycle Beta(グラブサイクル・ベータ)」を提供。インドのOla(オラ)は短距離の通勤・通学を推進するため、大学構内で「Ola Pedal(オラ・ペダル)」を始めた。

影響2:ラストマイルの交通手段の問題を解決し、公共交通機関の利用を増やす

ライムバイクは17年の年次報告書で、同社のサービス利用のうち、公共交通機関のターミナルを発着したケースが40%を占め、多くの米大都市圏での平均利用距離は約1マイル(1.6キロメートル)だったことを明らかにした。オッフォも17年の米国でのサービスのうち、人口密度の高い主要都市のターミナルなどでの3マイル未満の利用が90%に上ったとしている。

自転車シェアはサービスを手軽に使えるエリアに経済効果をもたらし、大学との連携を促し、21世紀のスプロール問題の解決に貢献する。

影響3:モビリティー市場全体を拡充する

自転車シェアは配車アプリやライドシェアサービスに比べてコストを大幅に抑えられるため、自治体から注目を集めている。米フィラデルフィア市は生活保護費の支給に使われるEBTカードで自転車シェアの利用料を補助する実験を成功させた。

自動車メーカー各社も自転車シェアの有用性に気付きつつある。米フォード・モーターは17年に自転車シェアサービス「GoBike(ゴーバイク)」を開始し、18年中に電動自転車を投入する方針を明らかにしている。同社は昨年、自転車の配置調整に使う運搬システムで特許を取得した。

■残る課題

乗り捨て型の自転車シェアのビジネスモデルには懸念もある。

規制面では、安全性の順守や、ヘルメットの着用を義務付ける法律がまだ制定されていない国がいくつかある。自治体も自転車を路上に散乱させ、混乱を引き起こす事業者の取り締まりに乗り出している。

運営面で最大の課題は、自転車の遺失をいかに阻止するかだ。中国の乗り捨て型自転車シェアのスタートアップWukong Bike(悟空単車)は昨年、様々な理由から自転車の90%を遺失し、経営破綻に追い込まれた。

収益化も依然として課題だ。乗り捨て型は他のモデルほど資本は必要ないとみられるが、大量の自転車を保有するにはある程度の費用がかかる上に、自転車シェア業界は激しい値下げ競争が始まっている。この1年間で、中国の自転車シェア18社のうち6社が資金難により撤退している。

中国のYouon Bike(永安)は、自転車シェア運営会社が単独の上場企業として存続できるかを占う試金石になっている。同社は昨年に新規株式公開(IPO)を果たし、8700万ドルを調達した。株価は上場当初は上昇していたが、その後は下げている。

こうした不確定要素にもかかわらず勢いを維持できれば、新たな自転車シェアモデルは(特に米国の)多くの都市を支配する自動車中心の交通システムの強力な代替策だということが明らかになるだろう。いずれにしても、自転車シェアの台頭で既存のモビリティーサービスとの切磋琢磨(せっさたくま)が進み、都市の交通手段の選択肢は広がる。

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