米の対中知財制裁、産業ロボなど1300品目 原案公表
【ワシントン=鳳山太成】米通商代表部(USTR)は3日、中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税の原案を公表した。産業用ロボットなど生産機械を中心とした約1300品目に25%の関税を課す。米国の消費者への悪影響を抑えるためスマートフォン(スマホ)や衣料品など輸入額の大きい消費財は除いた。中国も直ちに反応し、近く対抗措置を打ち出すと発表した。米中の貿易摩擦が一段と激しくなりそうだ。

5月下旬まで企業など一般から意見を募ったうえで対象品目を確定し、トランプ大統領が発動の是非を決める。実際に関税を発動すれば中国が報復措置に動き、本格的な貿易戦争に発展する恐れがある。
原案に入った対象品目は金属加工機や射出成型機、金型など企業が工場で使う生産機械が多い。化学品や医薬品も含めた。輸入規模は大きくないものの自動車や航空機なども盛り込んだ。
対象品目は2018年の想定輸入額で500億ドル(5兆3000億円)に相当する。17年の中国からの輸入額全体は5100億ドル。単純計算すれば輸入品の約1割に関税を課す形になる。
一方、米アップルの「iPhone」に代表されるスマホやパソコン、衣服や靴、おもちゃなど輸入額が大きい消費財は除いた。
USTRによると、対象品目は産業機械や航空・宇宙など中国が重点投資する産業から選んだ。そのうえで他の国から代わりに輸入できないような製品を除いた。ライトハイザー代表は「中国の輸出に最大限の損害を与える半面、米国の消費者への影響を最小限にする」と表明していた。
今後、米政権は制裁関税の詳細を詰めるのと同時に、制裁回避を求める中国との交渉も進める。米国は知財侵害対策に加えて、1000億ドルの貿易赤字の削減策を求めている。中国政府は天然ガスや半導体、自動車などの輸入増で応じる構えだ。米政権は通商交渉で納得できる合意に達した場合、関税発動を取りやめる考えを示唆している。
トランプ大統領は3月22日、通商法301条に基づき中国の知財侵害に制裁関税を課す方針を表明した。関税のほか、財務省が2カ月かけて中国企業による対米投資の制限策をまとめている。知財侵害について世界貿易機関(WTO)に提訴も済ませている。
米中の貿易摩擦は既に激しくなっている。米国は3月23日、中国などに鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の関税を課す輸入制限を発動した。中国は対抗策として4月2日から、米国から輸入する豚肉やワイン、果物など128品目に報復関税を発動している。