金子兜太さん最後の9句 主宰誌「海程」に掲載
2月に98歳で亡くなった俳人の金子兜太さんが亡くなる直前に作った俳句9句が、主宰した俳誌「海程」4月号に掲載されたことが3日分かった。〈河より掛け声さすらいの終るその日〉〈陽の柔わら歩ききれない遠い家〉など、老いを静かに見つめつつ最後まで現役俳人で在り続けた金子さんの姿が浮かぶ作品だ。

家族によると、金子さんは1月上旬に肺炎で入院。25日に退院後しばらく日中は埼玉県熊谷市の自宅で、夜は自宅近くの高齢者施設で過ごしていた。この時期は体調も安定しており、9句はその間に詠んだものという。「海程」で発表するため自身で清書もしていた。しかし2月6日に再び体調を崩して入院し、20日に死去した。

海程会会長の俳人安西篤さんによると、金子さんは高齢者施設と自宅との行き来を「さすらい」と表現したとみられる。日常の中で作られた作品が結果として「最後の9句」になったようだ。
安西さんは「自分の日常を悲観的にではなく、あくまで客観的に眺めている。『他界』(死後の世界)を重く捉えず、懐かしい人に会える、ちっとも怖くないと思っていたのでは。先生は最後まで自然体だった」と語った。〔共同〕