2018年10月18日(木)

子供見守る近所のIT 通学路に受信機、スマホで確認

2018/4/3 17:36
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登下校時などの見守りにIT(情報技術)を活用する自治体が相次いでいる。子供に電波発信機(ビーコン)を携帯させ、街角に置いた受信機のそばを通った時に位置情報を記録。大人がスマートフォン(スマホ)で移動履歴を閲覧できる仕組みだ。保護者らは「子供が一人で出かける時に安心」と歓迎する一方、測定の精度が低いなどの課題もある。

大阪府箕面市が小中学生に無料配布したビーコン(市教委提供)

ビーコンを携帯した子供の移動履歴をスマホで確認することができる(3月23日、大阪府箕面市)=一部画像処理しています

「一体どこで何をしているの。学校は随分前に終わったはずなのに……」。大阪府箕面市の自営業の女性(46)は小学1年の長女(7)が午後5時を過ぎても帰宅せず心配した経験がある。

頼りにしたのはスマホ。アプリを使い、ビーコンを持ち歩く長女の位置情報を調べた。登校時に校門をくぐった時点で更新が止まっていることに気づき、学校に問い合わせると、校内で友人と遊んでいると判明。女性は「すぐに居場所が分かって助かった」と振り返る。

箕面市は2016年から市立学校の小中学生にビーコンを無料配布し、所在を確かめる取り組みを行っている。学校や通学路、学習塾など計約700カ所に受信機を設置。ビーコンは近距離無線通信「ブルートゥース」で電波を発しており、専用アプリをインストールした市民のスマホを受信機として利用することもできる。

位置情報は保護者の承諾を得た上でサービスを提供する民間企業が管理し、学校側が行方不明の子供を探すときに活用する。市教育委員会によると、小学生の保護者の78.5%、中学生では60.9%が情報収集に同意している。

保護者は月額300円を支払うと、専用アプリで子供が移動した履歴を確かめることができる。市教委の担当者は「保護者からは『子供が一人で出歩く時も安心』との反響が寄せられている。今後も続けていきたい」と話す。

兵庫県伊丹市も16年から同様の施策を行っている。きっかけは14年に神戸市で小学1年の女児(当時6)が誘拐、殺害された事件。対策として約1千台のビーコン受信機を市内に備えつけた。

市職員や民生委員ら約150人がボランティアで行方不明の子供を探す制度も新設した。実用例はまだないが、保護者がアプリから捜索依頼を出すと、ボランティアのスマホに子供の名前、顔写真が配信される。

導入の可否を検討するため、実証実験を行っている自治体もある。東京都府中市は東京電力ホールディングス(東京・千代田)などと合同で17年11月~18年2月、市立小3校の学区内に計約60台の受信機を取り付け、保護者に体験してもらった。

PTAの会合などで聞いたところ、好意的な感想が聞かれた一方、「登下校時に位置情報が記録されない」などと測定の精度に対する不満が相次いだ。受信機が電波を捕まえられる範囲が約30メートルにとどまるのが原因で、市は期間終了後も実験を続け、受信機の台数を増やしたり、設置場所を見直したりする方針という。市の担当者は「ITの活用は、防犯カメラや人間による見守りを補うことができる」と評価する一方、「技術的な課題や費用対効果などから本格的に導入するかは現時点では未定」としている。

防犯ボランティア 進む高齢化

子供の見守りなどを担う防犯ボランティアは高齢化が目立つ。警察庁によると、全国の防犯ボランティア団体は2016年末時点で約4万8千。このうち65%は平均年齢が60歳代以上だ。同庁が14年に約3400団体を対象に実施したアンケート(複数回答)では65.6%が「メンバーの高齢化」を課題に挙げ「後継者の確保や育成が困難」との回答も47.1%に上った。

成増南町会(東京・板橋)の並木正道会長(79)は「活動の中心は50~60歳代。世代交代がうまくいかず、平均年齢が上がり続けている」と現状を嘆く。

立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「大学生に協力してもらう試みも過去にあったが、活動内容が単調なせいで長続きしない例が相次いだ」と指摘する。「犯罪者が出没しそうな場所を探す取り組みで、若い世代が興味を抱いて参加するようになった例もある。やりがいをアピールするだけではなく、『見守り活動は面白い』と感じてもらえるよう工夫を重ねることが必要だ」と話している。(桜田優樹)

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