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ブラジル代表、欧州遠征でW杯へさらなる自信

サッカージャーナリスト 沢田啓明

3月下旬、サッカーのブラジル代表が欧州でワールドカップ(W杯)登録メンバー発表を控え最後の強化試合を行った。23日に開催国のロシア代表と、27日には前回大会王者のドイツ代表と敵地で対戦して連勝。いくつもの収穫を手にした。

最大の成果は精神面だろう。ブラジル代表は自国開催の2014年W杯準決勝でドイツに1-7と大敗した。国際サッカー連盟(FIFA)ランキング1位で、今回のW杯ロシア大会でもブラジルと並んで有力な優勝候補であるそのドイツを、ベルリン五輪スタジアムの7万3000人の大観衆の前で1-0で下したことは、チームにとって大きな自信となったはずだ。

監督「我々は誇りを取り戻した」

ブラジルは2月末のフランスリーグの試合で右足首を骨折(全治約3カ月)し、欠場したエースのネイマール(パリ・サンジェルマン)、故障から復帰したばかりのCBマルキーニョス(パリSG)を除いてベストメンバーだった。一方、ドイツのレギュラー勢は4人だけ。4日前のスペイン戦にベスト布陣で臨んでおり、ヨアヒム・レーウ監督は他の選手を試す選択をした。

控え選手が多いとはいえ、ドイツは確かな技術を発揮し、しっかりパスをつなぐ。しかし、ブラジルは前線と中盤の選手が高い位置で強烈なプレスをかけてボールを奪うと、即座に攻撃に転じる。33分に右からのクロスをCFガブリエルジェズス(マンチェスター・シティー)が頭で押し込んで先制し、後半もコンパクトな布陣を保って追加点を狙う。終盤、ドイツが矢継ぎ早にFWを投入して勝利への執念を見せたが、粘り強い守備で対抗して勝ち切った。

試合後、チチ監督は「非常に高いレベルの試合ができた」と満足そう。「14年の敗戦のショックを完全に払拭できたわけではないが、我々は誇りを取り戻した」と胸を張った。決勝点を挙げたガブリエルジェズスも「気持ちでボールをゴールに押し込んだ」と声を弾ませた。

もしこの試合に敗れていたら、国内メディアと国民から「4年前に惨敗し、今度はBチームにも勝てなかった」と厳しく批判されていたはず。大きな意味を持つ勝利だった。

また、モスクワのルジニキ・スタジアムでロシアと対戦して快勝したのも重要だった。前半こそ相手の人数をかけた守備にやや苦しんだが、後半、サイドから崩して意表を突くボランチの飛び出しなど多彩な攻めでわずか13分間で3得点を奪った。守備では、時折サイドを破られる場面があったが中央の守りは堅く、ロシアにほとんど決定機を与えなかった。

このスタジアムは7月15日のW杯決勝の会場であり、選手たちは4カ月後に自分たちがこのピッチに立つイメージを抱けたはずだ。

戦力面では、チチ監督がネイマールの代わりに起用したMFドグラス・コスタ(ユベントス)が左サイドで爆発的なスピードを発揮してのドリブル突破で多くの決定機を演出したのが大きな収穫だった。

エースの攻撃力に過度に依存せず

マルキーニョスに代わり2試合でフル出場したチアゴシウバが素晴らしい出来で、レギュラーが十分に務まることを証明した。CBはミランダ(インテル)が軸だが、高い能力を持つ選手が3人いるのは非常に心強い。アタッカーのコウチーニョ(バルセロナ)、ビリアン(チェルシー)も常に積極的にゴールを目指し、チームがネイマールに過度に依存していないことを示した。

戦術面で、チチ監督はロシア戦でボランチのレナト・アウグスタ(北京国安)の代わりにアタッカーを1人増やし、いつもの4-1-4-1より攻撃的な4-3-3を試した。いつもはネイマールがある程度守備を免除されているが、"王様"がいないことで攻撃の選手全員が守備のタスクをこなし、チーム全体の守備力が向上。エースを欠く場合の格好のシミュレーションとなった。

課題は右SB、左SB、CFなどのポジションでレギュラーと控えに多少の実力差があること。ロシア戦で右SBファグネール(コリンチャンス)、CFフィルミーノ(リバプール)らが途中出場したが、出場時間が短かったこともあって大きなインパクトを残せなかった。

ネイマールの故障からの回復も懸念されるが、手術は成功し、専属の理学療法士、フィジカル・トレーナーのサポートを受けてすでにリハビリを始めている。当面、4月中旬に検査をしてその後の練習計画を立てる予定だ。

5月上旬にW杯登録メンバーが発表され、21日からブラジル国内で、28日からロンドンで合宿する。6月初めに欧州で調整試合を行ってから11日にロシアに入り、17日の1次リーグ初戦(スイス戦)を迎える。

今回の欧州遠征は南米予選を首位で突破したブラジルにさらなる自信をもたらした。国内では、「ロシアで4年前の屈辱を晴らせ」という声が充満する。しかし、チチ監督は「やるべきことを確実にやり、最高の状態で大会を迎えたい」と冷静だ。名将はこれからの2カ月半の準備が天国と地獄を分けることを知っている。

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