/

再審法制と憲法 適正手続き違反を問う

論点争点 メディアと人権・法

冤罪(えんざい)を救済する再審制度について、適正な刑事手続きを保障する憲法の観点から問題が提起されている。刑事法の研究者らと連携した九州再審弁護団連絡会(世話人・八尋光秀弁護士)が、戦後も抜本見直しがなかった再審法制の改正を国会に要請するとともに、再審請求審を通じ制度の不備を主張している。

再審法制の改正を目指す弁護士らの集会(2月26日、衆院第2議員会館)

刑事訴訟法に定めがある再審は、戦後の憲法制定で、有罪判決を受けた人を無罪や減刑する救済目的として位置づけられた。しかしそれを実現する具体的手続きの規定は見直されなかった。このため再審開始の可否を審理する訴訟指揮が裁判官に左右されることになり、救済は事実上「例外扱い」とされてきた。

連絡会は改正の優先項目として(1)「疑わしきは被告人の利益に」を明記し、再審にも刑事裁判の鉄則が適用されるとした最高裁判例(1975年の白鳥決定)の徹底(2)検察・捜査証拠の開示拡大と手続き規定の導入(3)「新規・明白な証拠」など再審を認める理由に、捜査や公判が憲法に違反した手続きだった場合も明記(4)検察官に限られ事実上機能していない公益的請求人を弁護士会などに拡大(5)抗告など検察官上訴の禁止(6)再発防止のため検証機関の設置(7)冤罪被害の回復措置――を挙げる。

再審制度の本来の機能を働かせるのが狙いだ。

個々の再審事件、とりわけ死刑事件で憲法との関係は問われつつある。1966年に福岡市で起きたマルヨ無線事件の尾田信夫死刑囚(70)は第7次再審請求審中だ。共犯の少年と電気店に侵入、従業員2人をハンマーで殴って現金を奪い、石油ストーブをけり倒して火災でうち1人を死亡させたとされ、70年に死刑が確定した。

尾田死刑囚は強盗は認めているが、控訴審から放火を否定。「放火でなければ強盗致死傷事件」(上田国広弁護士)。これまでにストーブは倒れても出火しないことが証明され、けり倒したという事実は否定された。

憲法問題も主張している。一審段階で尾田死刑囚が弁護士と接見したのは起訴1年7カ月後の1回だけで、同死刑囚が2度手紙を出して実現。事実上弁護人不在だった。上田弁護士は「死刑選択には特別慎重な審理が必要なはず。特に死刑囚は成人になって間もない青年だった」と指摘。判決確定後に事実認定が揺らいでいることも踏まえ、「弁護人の助けを欠いたままの事実認定や情状審理は憲法が保障する適正手続きに反し、再審理由にあたる」と訴える。

1992年に女児2人の遺体が福岡県朝倉市で見つかった飯塚事件で有罪とされ、死刑が執行された久間三千年・元死刑囚(執行時70)の死後再審請求審の特別抗告では、再審請求審の進め方について弁護団が違憲性を主張する。

徳田靖之弁護士は「目撃証言に関する捜査官の報告書などが確実に存在するのに高裁は検察側への開示勧告を見送った」と批判。審理が非公開の打ち合わせに終始し、請求人である遺族を立ち会わせなかった点も問題視する。「死刑判決では憲法が保障した手続きの公正さがとりわけ重視されるべきで、再審においても同じだ」と話す。

欧米では市民の司法への信頼を得るため、近年も再審制度の充実が図られている。内田博文・九州大名誉教授によると、日本の戦後の刑事司法改革では、戦時の治安立法で強化された検察官の権限が温存されるなど、冤罪が生じる体質を変えられなかった。そのことが「再審法の整備を曖昧にした要因」という。

内田名誉教授は「公安・労働事件などを通して一般的な刑事事件の弁護水準も上昇し、ようやく再審のあり方を真っ向から問題にできるようになった。再審こそ戦後の刑事司法のあり方を問う出発点」と語る。

(編集委員 田原和政)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン