ちょっと化粧が派手すぎたかも――。リクルートスーツに身を包んで就職活動に向かう途中、こんな不安にとらわれた女子学生は少なくないだろう。何しろ面接などの選考は、わずかな時間で評価が決まってしまう。「人は見た目が9割」とよく言われる。就活においてもそれが真実ならば、対策はあるのだろうか。
「化粧をするのは好きだけど、好印象の就活メークがわからなくて……」。都内の大学に通う女子学生が悩ましげに打ち明けた。リクナビが3月に開いた合同説明会の一角。「就活メーク講座」でのひとこまだ。
メーク講座は企業ブースとはまた別の熱気に包まれていた。ハリウッド美容専門学校(東京・港)の学生が講師となり、眉の描き方やチークの入れ方を伝授するものだ。当日はキャンセル待ちの行列ができるほどの人気で、参加者は約300人にも上った。
ある女子学生は「目力を出そうとするとアイシャドーを濃く塗りすぎてしまうのが悩みだった」。講座では、アイシャドーを単色でぼかすコツを教えてもらい「上手にメークできればちょっと自信になる」と笑顔を浮かべた。
ほかにも「いつも顔色が悪く見えるのが悩みだったが、チークを工夫したら華やかになった」という女子学生もいた。
とはいえ、こうした専門的なテクニックをいざ自分で駆使するとなると「さじ加減」が難しい。就活情報サイトなどには、就活メークは「色味を抑えたナチュラルメークが基本」と書かれているが、どの程度ならナチュラルなのか、探偵(女性記者)から見ても、正直よく分からない。
■自己分析が出発点
そこで専門家に、もう少し詳しくアドバイスをもらうことにした。
資生堂のシニアヘア&メーキャップアーティスト、高橋礼行さんに聞いてみると、就活メークのポイントは、(1)意欲(2)知性(3)清潔感――の3つだという。
すなわち、この会社で働きたいという意欲。入社後の活躍を期待させる知性。そして若々しく学生らしい清潔感。就活メークとは、これらの好印象な要素を採用担当者に伝えるためにある。
では、どんなメークをすれば、伝えられるのか。高橋さんは「よく学生からも質問されるが、アイシャドーやリップに『この色を使えば正解』というものはない」と述べた。そのうえで「大切なことは、自分が周りの人からどう見られているか。そして志望企業にどんな自分をアピールしたいのかをきちんと考え、理解することです」とも。
重要な指摘だ。メークをする際にも「自己分析が必要」ということだろう。エントリーシート(ES)を書くときと同じように。
例えば「実年齢よりも子供っぽく見られてしまう女性」が、グローバル系などバリバリ働く人が多い企業を志望する場合。高橋さんは「アイラインで目力を出し、ベージュやブラウン系のアイシャドーをぼかしてキリッとした印象を。それから髪の毛は結んでしっかりとしたイメージを出してみては」とお勧めする。
また、「普段はキツイ性格に見られがち」な人が、医療福祉系など人をサポートする仕事に就きたい場合は「ふんわりと柔らかなメークがオススメ。目元は明るめのベージュ系。髪の毛は両脇の髪をまとめたハーフアップはどうでしょう」。
高橋さんは「最近は眉毛やチークなど、子供っぽい印象のメークが流行っている。だが40~50代の面接官が若い頃はカッコイイ系のメークが流行していた。自分では普通のつもりでも子供っぽく受け止められるかもしれない」ともアドバイスする。就活メークは友達よりも、両親など年上の人に見てもらうことが有効そうだ。
■おでこを見せよう
最近、就活生の間で関心が高いのが、コンタクトレンズの使い分けだ。
例えば色つきのカラーコンタクトはどうだろう。「派手な印象がある」(大手カード)、「接客業なので、周囲に違和感を感じさせない方がいい」(百貨店)といった声も。業種によってはマイナスイメージになりそうだ。ただ、若者らに人気の「黒目を大きく見せるコンタクト」については、装着しているかどうかがパッと見て分からないこともあり、容認の声が多かった。