有翼の起業家 後進へ啓示

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2018/3/30 6:30
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個人がスタートアップに投資するときに税負担が軽くなる「エンジェル税制」の適用額は、16年度に約34億円で、5年前の約3倍に膨らんだ。エンジェルによる投資額は100億円前後との見方もある。VCによる年間投資額(約1500億円)と比べれば少ないが、風向きは変わっている。

背景にあるのは資金回収機会の増加。年間のIPO社数が80~90社という高水準で推移、大企業によるスタートアップの買収も増えている。多額の資金を手にした起業家がエンジェルになるという道筋がつきつつある。

アンケートでも、エンジェルたちの投資資金の原資で最も多かったのが「IPOによる売却資金」の47%だった。「M&Aによる売却資金」の32%がこれに続いた。

経営幹部として働きながらエンジェル投資をしている人たちもいる。フリークアウトの取締役の佐藤裕介氏(33)はその1人だ。「兼業型エンジェル」の佐藤氏がエンジェル投資をするのは「新規事業のヒントを得られるから」だ。人工知能(AI)やフィンテックなど「旬のテーマに沿った企業に投資している」。

クラウドファンディングのキャンプファイヤー(東京・渋谷)の家入一真社長(39)も兼業型エンジェルの1人だ。家入氏はエンジェル投資を「自分の知らない世界を垣間見るための参加費」と表現する。

外部資金の呼び込み役にも

起業先進地の米国シリコンバレーのように、元起業家や現起業家がエンジェルになって後進を支援する流れが日本でもできつつある。ただ「企業の実態と比べて割高になっている投資案件が増えている」との声があがっている。

06年に求人情報サービスのリブセンスを起業した村上太一社長(31)は「お金がない中で経営者が創意工夫するハングリー精神が薄れないか」と心配する。資金や経営のノウハウだけでなく、事業を成功させる意気込みもエンジェルは伝える必要がある。

もう1つの課題はエンジェル投資の1社あたりの投資額の少なさだ。投資から回収までに5~10年かかることが多く、1社あたりの投資額は数百万円~数千万円と小さい。日本経済新聞のアンケートでも1社あたりの投資額で最も多かったのが「1000万~2000万円」の42%だった。億円単位の資金を求める企業にとっては力不足の感は否めない。

こうした中、目利き力に優れたエンジェルが外部から資金を集める動きも出てきた。コロプラ元副社長の千葉功太郎氏(43)が17年に設立した総額約16億円の「ドローンファンド」がその先駆けだ。三井化学や日本ユニシスといった大企業のほか、中小企業基盤整備機構も5億円を出資した。

中小機構はこれまでVCが運営するファンドに出資してきたが、エンジェルが立ち上げたファンドに出資するのは初めてだ。中小機構の田所創理事は「成功した起業家がエンジェルになる動きを加速し、リスクマネーの供給を拡大する」と出資の狙いを説明する。

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