2019年5月23日(木)

「イーサリアム」支援ファンドのイベント、都内で開催

2018/3/29 19:10
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ブロックチェーン(分散型台帳)を使った有力プラットフォーム「イーサリアム」の関連スタートアップ企業を支援するファンドの初のイベントが29日、東京都内で開かれた。参加者の過半が外国からで交流の輪が広がった。ファンド創設者らは起業家らを助成し、インフラ整備や分散型アプリ(Dapps、ダップス)の開発や普及を後押しする。コミュニティー自体を各地に広げ人材確保も狙う。

ブロックチェーンにちなみ人間の鎖をする「イーサリアム・コミュニティー・ファンド」の創設メンバーら(29日、東京・港)

イーサリアムの概要を説明する共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏(29日、東京・港)

ファンド名は「イーサリアム・コミュニティー・ファンド(ECF)」で、イーサリアム財団も支援する。グローバルで展開するイーサリアムの7つのプロジェクト(COSMOS=コスモス、OmiseGo=オミセゴー、Golem=ゴーレム、WEB3、Maker=メーカー、グローバル・ブレイン・ブロックチェーン・ラボ、Raiden=ライデン)が協力する。運用額は公表していない。

イーサリアムはビットコインに次ぐ著名な仮想通貨だが、より分散型のオープンな環境で開発・取引できるのが特長。契約の条件や履行したかなどを自動でする「スマートコントラクト」の手段として注目され、仮想通貨の枠を超えた利用が期待されている。一方で膨大なデータ量の取引が難しいのが課題。取引容量を多くするための開発も進んでいる。

この日のイベントにはECFの助成を受けたスタートアップ5社の代表も登壇。セキュリティー開発や、ゲーム中のデジタル領域をどう確保するかを研究する起業家らが事業を説明した。会場からは、なぜ仮想通貨による資金調達「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」ではなく、ECFの支援を受けるのかという質問も。「運用面に課題がある」との答えがあり慎重姿勢が目だった。出席者の一人は「開発に集中したいので、ICOのように価値の振れ幅の大きいものは関心がない」と語った。

イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏によると、全世界で数百のスタートアップがイーサリアムのプロジェクトを推進中で、大企業も参加し始めているという。「私企業が手がけるインセンティブがないところを財団が支援してきた」(ブテリン氏)が、ECFは補完する役割が期待される。

プロジェクトの一つ、WEB3を代表したギャビン・ウッド氏は「技術だけでけでもコミュニティー内で知識を共有したい」と語る。イーサリアムの特性もあり、こうした人のつながりを前面にした活動をしやすいのも特長だ。

ECFにはタイを拠点に長谷川潤氏が経営するオミセと、百合本安彦氏が率いるベンチャーキャピタル(VC)のグローバル・ブレイン(GB)が参加し、日本人も一定の影響力がある。ECFの初回イベントが東京で開かれた主因だ。長谷川氏は法定通貨や仮想通貨、各種ポイントなどの相互互換性がない現状を指摘し、「イーサリアムをベースに効率的に価値交換できるようにしたい」と意気込む。

6月にはオミセとGBが主導するブロックチェーン特化型のコワーキングスペース「ニュートリノ」が渋谷でオープンする。似た拠点はベルリンなど各地に立ち上がっており、リアルの結びつきが日本でも広がりそう。

いまIT(情報技術)業界の最大の話題が米フェイスブックによる利用者情報の不正流用問題だ。イーサリアムはフェイスブックやグーグルなどの「GAFA」のようなプラットフォーマーを持たない。長谷川氏は日本経済新聞の取材に「ここ3日間はコミュニティーではフェイスブックの話題で持ちきり。イーサリアムなどブロックチェーンなら個人自らが情報の公開範囲を決められ、注目を浴びる契機にもなりうる」と語った。

日本ではブロックチェーン実装の動きはまだ鈍いが、海外での実際のビジネスへの応用が始まる。そしてファンドも立ち上がった。IT産業の主役交代の胎動が始まったのかもしれない。

(企業報道部 加藤貴行)

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