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最古の競馬場の悲願 19年JBCは浦和開催

私が担当した前回の当コラム(2017年11月25日付)で、「地方競馬の祭典」JBC(ジャパン・ブリーディングファームズカップ)を取り上げました。それから約4カ月後の3月19日、19年のJBC開催競馬場が発表されました。

満員となった17年JBC(大井競馬場)

19年のJBCは11月4日、浦和競馬場(さいたま市)で開催されます。19回目にして、南関東4競馬場の中でただ一つ、JBC未開催だった浦和が招致に成功したのです。以前からJBC開催を目指しているという話は耳にしていましたが、その裏に関係者のどんな思いがあったのか。実際に話を聞いてみました。

70年後に待っていた吉報

1948年に国営(現在の中央)、公営が並立する枠組みを定めた競馬法が制定された後、日本初の公営競馬を開催したのが浦和競馬場でした。今は周りを住宅地に囲まれていますが、開設当時はコースの内側も外側も田んぼ。何とものどかな光景が広がっていたといいます。けいが速歩(馬が1人乗りの二輪馬車を引いて走る)や障害戦も行われた黎明(れいめい)期の浦和競馬は大変な盛り上がりで、スタンドは連日、びっしりと人で埋まる大盛況。現在の最寄り駅である南浦和駅が開業する61年(当時は国鉄)までは、浦和駅から競馬場までの道に長い行列ができるほどだったそうです。

かつての浦和の姿を収めた写真。「南浦和駅開設記念競馬」の開催を伝える看板も写っている(中央上)

しかし、91年度に過去最高の384億円を記録した売り上げは徐々に減少し苦境に。01年には累積赤字が過去最多の約25億円まで膨れ上がり、競馬の存続自体が議論になる状況に追い込まれました。そうした状況から運営体制のスリム化、南関東4競馬場のインターネットによる馬券発売など懸命の経営努力を続け、09年には累積赤字の解消に成功。12年2月からは「ウインズ浦和」として日本中央競馬会(JRA)の場外馬券発売を、4月にはJRAのネットシステムを通じた浦和競馬の馬券発売をそれぞれ開始しました。魅力あるレースづくりにも、JRAや他の地方競馬と連携しながら取り組み、昨今のスマートフォンの普及なども相まって、16年度には四半世紀ぶりの記録更新となる389億円の売り上げを達成しました。17年度にはついに400億円の大台も突破と、上げ潮に乗った中で悲願のJBCの開催も実現に至ったのです。

情熱が起こした「拍手」

JBC開催が発表された翌週、取材のため非開催日で場外発売実施中の浦和競馬場へ向かうと、コース内側にある芝の緑鮮やかな広場に地元の方々、親子連れの方々の姿が見えていました。今回、話を聞いた埼玉県浦和競馬組合・総務課の飯田泰士さんは「この競馬場は地元に密着した、憩いの場所でもあるんです。開催をしていない日は、内馬場も開放して地域の方々が入れるようにしているんですよ」と語ってくれました。私が普段、取材やプライベートで足を運ぶ開催日とはまた違う雰囲気が、そこにはありました。

浦和の場内には19年JBC開催を祝う看板も

飯田さんによると、19年のJBC開催実現を見据えて準備が進められたのは15年ころから。大型ビジョン(浦和ビクトリービジョン)の新調、スタンドや競馬場にある馬房の改修・改善計画などが進められる中、大井や川崎で行われた近年のJBCの視察も重ねました。それだけに「関係者の方からもJBCを浦和で、という声があがっていましたので、JBC招致は悲願でした」。「浦和にできないはずはないし、浦和がJBCを開催することでJBCの意義を深められる」――。関係者はそんな思いで準備に取り組んでいたといいます。JBC開催場は毎年、立候補した各主催者によるプレゼンテーションを踏まえて、JBC実行委員会が決定します。JBC招致決定の知らせを、事務所で待機していた浦和競馬の職員に報告すると拍手が起きたというエピソードを聞くことができました。

「近い」競馬場でこその醍醐味

飯田さんは「今年のJRA(京都)開催で認知度が上がったところを、来年は浦和が引き継ぐので、ぜひ盛り上げたい」と熱く語ります。浦和競馬場のウェブサイトでは総収容人数を3万人と紹介していて、当日の入場者数の目標も3万人。「それだけのファンの方に来場していただけるJBCにしたい」とのこと。「浦和はいろいろな意味で『近い』のです。走る馬たちとの距離も近いですし、地域のみなさまにとっても『近い』存在の競馬場なので、競馬の醍醐味を体感できるJBCを開催したいですね」と締めくくってくれました。

現在工事中の浦和の第2スタンドの完成予想模型

JBCに向けて場内では現在、2号スタンドが工事中。19年に完成し、新装なった浦和競馬場がJBCを迎えます。果たして、どんな盛り上がりをみせるのか。今年のJBCもまだ終わっていない春ですが、来年の秋、できることならその盛り上がりを現地で感じていたい。そう願いつつ、桜の咲く競馬場を後にしました。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 大関隼)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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