名鉄「成長投資倍増の700億円」次期3カ年計画
名古屋鉄道は26日、2020年度を最終年度とする新たな3カ年の中期経営計画を発表した。少子化やライフスタイルの変化をにらみ、拠点駅の複合開発やシェアリングビジネスなどの新規事業を積極化する。成長・戦略投資として、グループ全体で現在の3カ年計画の2倍にあたる700億円を想定し、収益源の多様化に攻めの姿勢を打ち出した。
記者会見した安藤隆司社長は次期中計について「収益力強化に向けた投資を拡大させる」と強調した。多角化を推し進めた結果、1990年代に収益が悪化した。その後立て直しに向けた事業の絞り込みや体質強化を優先してきた。安藤社長は「ここ6年である程度達成できた」と話した。
少子化で沿線人口が減少する懸念もある。鉄道事業などが柱となる名鉄にとって、新たな収益源の開拓が必要との認識が積極投資を後押しする。個別の投資額は明らかにしなかったが、成長・戦略投資は現計画の346億円から倍にする。鉄道設備の更新など固定的な投資を含めた全体の投資額は2000億円と、同3割増える。
「神宮前」が始動
重点投資の1つは不動産事業など沿線開発。この日は名古屋市西区名駅1丁目の再開発計画などを含め、名古屋駅の周辺で4件の再開発に取り組むことを明らかにした。
次期中計後の22年度から名駅で6棟一体の再開発工事に着手する予定。安藤社長は4件の再開発について「名駅の再開発を補完するような機能を持たせたい」と述べた。
また名古屋市熱田区の神宮前駅東側で商業施設と賃貸住宅を組み合わせた複合ビルを20年度内に開業する。敷地面積は約6700平方メートルで地上12階建て。低層階に20店舗ほどが入居し、高層階に約100戸の賃貸住宅を整備する。
ほかにも大曽根駅(名古屋市東区)で20年春開業をメドに商業施設の再開発計画を進めるほか、常滑駅(愛知県常滑市)や江南駅(同江南市)などでも商業施設の再開発計画を盛り込んだ。
自転車シェアも
一方、新規事業としてはモノの「所有」から「利用」に消費の流れがシフトしているのをにらみシェアリングビジネスの強化を打ち出した。グループで展開するカーシェアリングも積極展開し、3年間で保有台数を27%増やす。シェアサイクルも事業化を検討する。新規事業ではドローンの操縦を教える教室を18年春に開校する。
17年度にスタートしたリハビリ型デイサービスや学童保育などのネットワークを活用した生活関連事業も充実させる。デイサービスは30店舗、小規模保育施設は20店舗まで拡大する予定だ。こうした一連の施策で20年度に営業利益500億円(17年度見込みは455億円)を目指す。
この日の記者会見では目玉である名駅での6棟一体再開発については、「22年度の工事着手に向けて検討を進める」(安藤社長)と説明するにとどめた。近畿日本鉄道などとの調整も含めて課題が多く、収益を見込める入居テナントなどの見極めも必要だ。既存ビルの解体による減収は年500億円に達する見通し。今後はリニア時代をにらんだ早期の構想具体化が求められそうだ。
(長縄雄輝)