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「神の左」山中引退 一芸極めた稀有なチャンピオン

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2018/3/27 6:30
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世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級チャンピオンの山中慎介(35)が26日、引退を発表した。ボクシング人気の高かった昭和のスーパースター、具志堅用高にあと一歩と迫った日本歴代2位の世界王座12連続防衛という「記録」もさることながら、数々の鮮烈なKOシーンで「記憶」にも残る名チャンピオンだった。

「最高の『神の左』はロハス戦」

山中といえば、「神の左」と呼ばれた左ストレートが有名だ。日本ランキングに名を連ねた頃に後援会を組織してくれた友人が名付け親だった、と山中本人から聞いたことがある。少々仰々しい冠に最初は本人も恥ずかしそうにしていたが、2011年11月に世界チャンピオンになってからは、その左で鮮やかなKOシーンを連発。26日の記者会見でも「その言葉に恥じない試合をしてこられたかなと思う」と振り返った。

現役最後となったルイス・ネリ(左)戦は2回TKO負け=共同

現役最後となったルイス・ネリ(左)戦は2回TKO負け=共同

「生涯最高の『神の左』は?」と会見で問われ、自身が選んだのが、12年11月に仙台で行った2度目の防衛戦での一発。第7ラウンド、アゴを打ち抜かれた元WBCスーパーフライ級王者トマス・ロハス(メキシコ)が顔面からほぼ真下にダイブするシーンは衝撃的だった。

また「最も印象に残る試合」として本人が挙げた16年9月のアンセルモ・モレノ(パナマ)戦で見せた左ストレートも忘れがたい。世界ボクシング協会(WBA)バンタム級王座を12度防衛したモレノは、「亡霊」の異名を持つ守備の達人だった。この1年前の対戦では2-1の僅差の判定勝ち。完全決着を誓って臨んだ再戦だった。

互いに1度ずつダウンを奪って迎えた6回、意を決した踏み込みから放たれた左ストレートで、モレノを赤コーナー下まで吹っ飛ばした。モレノの頭から飛び散った汗、リングサイドまで聞こえてきた破裂音が今も耳目にこびりついている。7回TKO勝ちで返り討ちにしたこの一戦は、のべ7人の世界チャンピオン経験者を撃破した12度の防衛の中でも最も価値ある勝利だったろう。

世界戦で奪ったダウンは実に30回。この数字もさることながら、驚くべきは攻撃がほぼワンツー一辺倒だったことだ。同時代に長期政権を築いた長谷川穂積(WBCバンタム級王座10度防衛)や内山高志(元WBAスーパーフェザー級王座11度防衛)のようなアッパーやボディーブローはほとんど打たなかった。

一瞬で踏み込み、打ち抜いた左

26日の会見に同席した帝拳ジムの浜田剛史代表(元WBCスーパーライト級王者)は「最初に習うワンツーストレートで世界チャンピオンになった選手は他にいないのではないか」とたたえ、山中本人も「歴代の世界チャンピオンの中でもトップクラスの引き出しの少なさだったと思う」と言って笑わせた。

この競技のイロハのイとも呼べる技術だけで世界レベルで勝ち続けた。回転よく多角的なパンチを操るコンビネーション全盛の現代ボクシングにあって、山中は実に稀有(けう)なチャンピオンだったといえる。裏を返せば、山中の左がそれだけオンリーワンの傑物だったともいえよう。

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