日産、不正検査問題「幕引き」 信頼回復へ残る課題

2018/3/26 15:36
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日産自動車は26日、無資格の従業員が完成検査をしていた問題で、国土交通省から業務改善指示などの処分を受けた。国交省は日産本社が問題を把握していながら各工場に適切な指示をしていなかったことなどを改めて指摘。「経営層を含め組織の責任は極めて大きい」と指弾した。問題発覚から半年で「幕引き」を迎えたが、法令順守の意識を現場まで徹底できるかなど、引き続きトップの責任が問われる。

石井国交相(左)から指示文書を受け取る日産自動車の西川広人社長(26日午前、国交省)

同日、国土交通省を訪れた日産の西川広人社長に対し、石井啓一国交相は「ユーザーに不安を与え、自動車型式制度の根幹をゆるがす行為で極めて遺憾」と指摘した。西川社長は「安全第一、法令順守をさらに徹底する」と改めて陳謝した。

国交省は一部の車で検査漏れの項目があったとして、道路運送車両法に基づく過料を適用するように横浜地裁に通知した。焦点となっていた刑事告発は見送った形だが、日産には法令順守や説明責任など重い課題が突きつけられている。

国交省がとりわけ強調したのは、問題が発覚して以降の日産経営陣の不適切な対応だ。

2017年9月18日、国交省が日産車体湘南(神奈川県平塚市)への立ち入りを実施した際、完成検査の資格を持たない従業員が検査を実施し、検査員の印鑑を使って検査証に押印していたことが判明した。19日に日産本社は栃木工場(栃木県上三川町)や追浜工場(神奈川県横須賀市)でも同様の不正が行われていたことを把握した。

日産は問題を把握していながら27日になってようやく各工場の工場長を集め、国交省の立ち入り検査に正直に答えるなど誠実に対応するよう指示した。

この前後、追浜工場などへの立ち入り検査の際に従業員が不正確な説明をしたり、関係資料の一部を修正、削除するなど不適切な行為が行われた。これらの行為は30年以上前から各工場で常態化していたが、そのような実態を各工場の管理者や日産本社が把握、管理できていなかった。

不正が助長されたのは、急激な生産拡大への対応と短期収益の過大な追求で現場の負荷が高まっていたことが影響している。

17年11月に日産が国交省に提出した調査報告書には、日産の国内工場が北米に輸出する多目的スポーツ車(SUV)や国内向けの小型車「ノート」のヒットで急激に忙しくなり、大量の完成検査員が必要となったことを問題の背景として指摘している。完成検査員を養成するため多数の期間従業員が補助検査員となった。その頃から補助検査員による完成検査が広い範囲で行われるようになった。

日産は17年11月に提出した再発防止策で検査員を増やすほか、生産スピードを通常の4~8割に落とし教育を優先させるといった対策を発表。形骸化していた教育も見直すと明らかにした。18年3月時点で完成検査を規格に準じて確実に実施するための対策を全て実施。生産スピードは18年1月時点で不正発覚前の状態に戻っており、業績に大きなダメージは出ていない。

生産は持ち直しても生産現場との距離を縮める問題の解決は容易ではない。ある自動車メーカーの首脳は「現場を訪れ地道に法令順守の大切さを理解してもらうしかない。フォローできない部分はIT(情報技術)を使って不正を防ぐ」と、問題の解決に時間がかかることを指摘する。

不正が広がった間、日産の社長や最高経営責任者(CEO)を務めたカルロス・ゴーン会長の責任について、西川社長は「(ゴーン氏が推し進めた)『日産リバイバルプラン』の以前から問題があったので、それが原因だとは言えない」と、ゴーン会長の責任について言及していない。ゴーン会長も「私は日産のCEOではない」として、問題に対応する責任はないとの立場を崩していない。

26日、記者団から経営責任について問われた西川社長は「長年続いたあしき状態を完全に断ち切って将来に進む」と語ったが、言葉少なく質問を遮った。

日産は仏ルノーや三菱自動車との生産や開発部門での連携や一部統合を目指している。だが、経営陣と現場が法令順守の意識を徹底し、消費者への説明責任を果たさなければ、3社のアライアンスはシナジーを出す前に頓挫しかねない。

(花井悠希)

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