2018年8月14日(火)

ブルックナー8番競演 朝比奈の十八番(もっと関西)
カルチャー

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2018/3/23 17:00
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 関西のクラシック界でブルックナーの交響曲第8番といえば、大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽総監督を務めた朝比奈隆の十八番だった。今春、大フィルと関西フィルハーモニー管弦楽団がこの大曲を相次ぎ演奏する。指揮するのはいずれも名匠の域に達する指揮者だ。ともに朝比奈やブルックナーへの思い入れが深く、熱演への期待が膨らむ。

■神秘感じる長編

飯守泰次郎と関西フィルはブルックナーの全曲演奏に取り組む(17年3月)=山本 成雄撮影

飯守泰次郎と関西フィルはブルックナーの全曲演奏に取り組む(17年3月)=山本 成雄撮影

 ブルックナーの第8番は演奏時間が約80分と長大。教会のオルガン奏者として活躍した作曲家だけあって、神秘性と深大さを感じさせる。第9番は未完に終わっており、第8番が最後の完成作だ。朝比奈は大フィルの第300回定期演奏会(1996年)など節目を飾る曲として取り上げてきた。そのため、関西では特に熱心なファンが多い。

 関西フィルは31日のザ・シンフォニーホール(大阪市北区)の定期演奏会で、桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎(77)が指揮する。飯守は90年に関西フィルと初共演し、2001年に常任指揮者、11年に現ポストへ就いた。同年から満を持してブルックナーの交響曲全曲演奏に挑んでいる。

 作曲家の発展過程をたどるため、通し番号順に取り組む。19年は第9番、20年は第0番を予定。楽団創設50周年であり、飯守の80歳と両者の共演歴30年という節目の年で完結する。

 飯守は東京の楽団とも全曲演奏の経験があるが「朝比奈先生の打ち立てた演奏が素晴らしく、東京で演奏するよりも関西のほうがプレッシャーだ」と苦笑する。しかし「作品があまりに偉大なので、とやかく考えるよりも内容に踏み込むしかない」と気を引き締める。

尾高忠明は大フィルの音楽監督就任披露となる(17年11月)=飯島 隆撮影

尾高忠明は大フィルの音楽監督就任披露となる(17年11月)=飯島 隆撮影

 一方、大フィルは4月7、8日、フェスティバルホール(同)の定期演奏会で演奏する。尾高忠明(70)の音楽監督就任披露の演目として選んだ。尾高は04年、大フィルが朝比奈の死去以降で初めてブルックナーを演奏した定期演奏会を指揮した。「楽団員がすごい演奏をしてくれて、朝比奈先生がその場にいるような気がした」と振り返る。第8番での共演は今回が初めて。尾高は「先生の得意曲で、音楽監督としての第一歩を歩み出す覚悟」と自らを奮い立たせる。

 2人はブルックナーへの思い入れも強い。欧州の歌劇場でオペラの経験が長い飯守の十八番として思い浮かぶのは、ワーグナーだ。しかし、ブルックナーも同様に重きを置く作曲家だという。

 ブルックナーは交響曲第3番を献呈するなど、ワーグナーに心酔していた。飯守は「ワーグナーは劇音楽ばかりだったが、ブルックナーは純粋音楽の世界にとどまった。全く違う作曲家だが、転調の激しさや半音の使い方など、音楽の作りは似ている」と説明する。

 一方、尾高は「ブルックナーを振りたくて指揮者になった」と公言するほど。中学生のとき、名演として知られるシューリヒト指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるブルックナーのレコードに感銘を受け、指揮者を志した。日本交響楽団(現NHK交響楽団)の指揮者だった父親の尾高尚忠が生前最後の定期公演で指揮を執ったのもブルックナーだという。

■優美な第3楽章

 スケールが大きくドラマチックな第8番だが、2人が異口同音に語るのは、ゆったりとした第3楽章の美しさだ。

 飯守は「最も人の心を動かす、深い内容の(ゆったりとした速度で演奏される)緩徐楽章だ」と強調。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」第2幕の愛の二重唱「夜のとばりよ、降りてこい」という部分と同じ変ニ長調で書かれており「ワーグナーの影響がよく表れている」とも指摘する。一方、尾高は「例えようもなくきれいで、神に近く、崇高。弦楽器が良い響きをするように作られている」と力を込める。

 飯守と尾高はいずれも斎藤秀雄の門下生で、尾高は学生時代、先輩だった飯守の指導を受けたこともあるという。尾高は「飯守さんは音楽が本当に好きで、愛しているのを感じる」と評する。飯守は尾高について「非常に表現意欲が強く、はっきりした音楽を作る。素晴らしい演奏になるだろう」とエールを送る。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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