2018年12月19日(水)

「食べる通信」創刊3年 福島の高校生、食の魅力発信
大震災7年

2018/3/22 10:53
保存
共有
印刷
その他

東日本大震災の被災地で、福島の高校生が生産者に取材し、食材の魅力を伝える季刊誌「食べる通信」が4月で創刊3年を迎える。雑誌と一緒に様々な食材が届くことが好評で、購読者は当初の3倍に増えた。卒業した創刊メンバーの思いを引き継いだ後輩たちが取材に駆け回り、故郷の復興を後押ししている。

農家からイチゴの選別法の説明を受ける高校生ら

「見ただけでも味が分かりますよ」。2017年12月の福島県矢吹町。農家の男性が種の色や大きさで、おいしいイチゴを選んでみせると、6人の高校生が真剣な面持ちでペンを走らせた。

ぷっくらしたイチゴをほお張った高校生は「甘くておいしい」と笑顔。取材した内容を2月冬号の巻末特集「イチゴに人生を捧げた男の物語」にまとめ、希望者にイチゴを送った。

購読者からは「甘さのバランスが取れたイチゴ。とても満足して食べた」「若い人が故郷のために頑張る姿に明るい未来を感じる」とのFAXが寄せられた。

「高校生が伝えるふくしま食べる通信」(通称こうふく通信)の創刊は2015年4月。初代メンバーで明治大2年の菅野智香さん(20)が、東日本大震災を機に13年7月に創刊した岩手県の「東北食べる通信」を知ったのがきっかけとなった。その後、東北食べる通信など37地域が参加する一般社団法人「日本食べる通信リーグ」に加盟。創刊号で205人だった購読者は630人に増えた。

被災地の人材育成などを手がける一般社団法人「あすびと福島」(福島県南相馬市)が編集作業を手助けする。高校生が生産者を取材し、採れたての野菜や旬の魚介類とともに購読者に送る。手間をかけて野菜を育てる様子や漁の苦労などを記事と写真で知り、食材を味わえるのが魅力だ。年4回の季刊で購読料は毎号2500円。菅野さんは「震災で身の回りの風景が変わってしまった。福島産食材に対する風評被害を払拭したかった」と創刊にかけた思いを振り返る。

菅野さんの思いは後輩たちに引き継がれ、これまで計5学年の生徒が編集に加わった。2月冬号で編集長を務めた県立安積黎明高校2年の渡辺瑠奈さん(17)は泉崎村の養豚業者を取材。風評被害に苦しみながら「夢味ポーク」ブランドを立ち上げ、消費者に直接豚肉を届ける家族の物語を記事にした。

「いいものを作ろうと真剣に向き合う生産者に心を打たれた。作り手の思いや情熱が伝われば、届いた食材がよりおいしく感じられるはず」と渡辺さんは語る。

「東北食べる通信」の生みの親で元岩手県議会議員の高橋博之さん(43)は「高校生のときから社会問題に向き合い、伝え続けていて頼もしい」と今後の活躍にも期待。あすびと福島の椎根里奈さん(39)は「食べる通信の取り組みを通じて、大人になってからも福島に関わり続けてほしい」と願った。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報