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ドバイ国際競走、日本馬最多参戦が意味するもの

欧州の異常気象も影響

アラブ首長国連邦(UAE)ドバイのメイダン競馬場で31日、ドバイ国際競走が開催される。日本からは2017年の日本ダービー(G1)を勝ったレイデオロ(牡4、美浦・藤沢和雄厩舎)など、過去最多となる14頭が海を渡る。ここ数年、ドバイに遠征する日本馬は増加傾向にある。16年までは国内の春シーズンに芝2000~2400メートルの古馬G1がなく、この路線の日本馬がドバイに活路を求めるケースが多かった。だが、17年に芝2000メートルのG1、大阪杯(阪神、今年は4月1日)ができたにもかかわらず、遠征頭数はさらに増えた。なぜだろうか。

今年のドバイ国際競走遠征馬
ドバイ・シーマクラシック
(G1、芝2410メートル)
レイデオロ(牡4)
モズカッチャン(牝4)
サトノクラウン(牡6)
ドバイ・ターフ(G1、芝1800メートル)
ヴィブロス(牝5)
クロコスミア(牝5)
リアルスティール(牡6)
ディアドラ(牝4)
ネオリアリズム(牡7)
ドバイ・ワールドカップ
(G1、ダート2000メートル)
アウォーディー(牡8)
ドバイ・ゴールデンシャヒーン
(G1、ダート1200メートル)
マテラスカイ(牡4)
UAEダービー(G2、ダート1900メートル)
ルッジェーロ(牡3)
タイキフェルヴール(牡3)
ゴドルフィンマイル
(G2、ダート1600メートル)
アキトクレッセント(牡6)
アディラート(牡4)

日本馬は6つのレースに出走する。芝2410メートルのドバイ・シーマクラシック(G1)にはレイデオロのほか、昨年のエリザベス女王杯を勝ったモズカッチャン(牝4、栗東・鮫島一歩厩舎)、宝塚記念を勝ったサトノクラウン(牡6、美浦・堀宣行厩舎)と、G1馬3頭が出走する。芝1800メートルのドバイ・ターフ(G1)には5頭が参戦。そのうち、17年のこのレースの覇者、ヴィブロス(牝5、栗東・友道康夫厩舎)、16年の覇者であるリアルスティール(牡6、栗東・矢作芳人厩舎)、17年の秋華賞馬ディアドラ(牝4、栗東・橋田満厩舎)、香港のクイーンエリザベス2世カップを勝ったネオリアリズム(牡7、美浦・堀宣行厩舎)の4頭がG1馬だ。ほかにもドバイ・ワールドカップ(G1、ダート2000メートル)にアウォーディー(牡8、栗東・松永幹夫厩舎)が遠征するなど、ダートのレースにも6頭が出走する。

過去10年の日本馬の出走頭数をみると、08~13年は12年(7頭)を除き、3~5頭で推移。だが、14年以降はすべての年で7頭以上が遠征するようになった。16、17年はともに10頭が出走。ドバイ遠征の近年の増加ぶりが目立つ。今年は芝のG1馬を7頭も含む。16年が2頭、17年が1頭だったことを考えると、顔ぶれも一気に豪華になった。

「日本馬のレベル向上の象徴」

日本馬の参戦増は「日本馬のレベル向上の象徴」と海外競馬に精通する奥野庸介氏は話す。奥野氏によると、ドバイ国際競走は登録のあった馬のうち、レーティング(馬の能力を数値化した指標)上位の馬から招待していき、その馬が断ると次に高い馬へと招待を出す仕組みで出走馬を決めるという。日本馬が強くなり、「レーティングが高くなってきている」ことから自然と日本の馬が選ばれるようになった。実際、秋に東京で行われる国際招待競走、ジャパンカップ(G1、芝2400メートル)では、日本馬のホームで戦っても勝てないとの理由から海外馬の出走が減っている。それほど日本馬は力をつけた。特に芝2000~2400メートルの路線は層が厚い。

対する海外馬だが、芝の有力馬が多い欧州では平地競走のシーズンは春に始まる。古馬の高額賞金のレースは夏以降に多く、シーズンイン直前のドバイの時期には超一流の馬はまだ仕上げてこない。オーストラリアも自国の賞金水準が上がっており、秋のシーズンのまっただ中に開催されるドバイ国際競走への遠征は少ない。同様に春のシーズン中である香港からの参戦もそれほど多くはない。

ドバイ・ターフには昨年の覇者ヴィブロス(右)など5頭の日本馬が参戦する(写真は2016年の秋華賞)=JRA提供

日本馬の場合、16年まで3~5月の春のG1シーズンに芝2000~2400メートルの古馬G1が国内になかったため、有力馬がドバイに向かった。大阪杯がG1となってもドバイ遠征が減らなかったのは、この路線の層が厚い日本国内でG1を戦うより、遠征した方が好成績を出せる可能性が高い、というレベルの馬の受け皿としてドバイのレースが活用されているためである。有力馬主や牧場にとっては馬を使い分けられるのは大きなメリットである。そのうえ、一大カーニバルであるドバイの国際競走は「世界中の人が注目するレース。そこでいい成績を残すと、繁殖馬になった後、その子供たちが世界中に売れるようになる。日本の生産者にとって、世界の耳目を集めるレースで結果を残す意味は大きい」(奥野氏)。

加えて今年は特殊事情も重なった。「異常気象で欧州も雪が多かった。調整が思うように進まず遠征を断念した欧州の陣営も多い」(同)。その分、日本馬の招待が増え、遠征頭数が過去最多となった。

国内のG1に空洞化の懸念

レベルの向上した日本馬が海外で活躍するのは当然、喜ばしいことではある。ただ、レイデオロのように日本国内で戦ってもG1で首位争いができる馬が同時期の国外のレースに出走するのは、興行的には痛い話だ。国内の2000~2400メートル路線は層が厚く、大阪杯には16年に菊花賞と有馬記念を勝ったサトノダイヤモンド(牡5)、昨年のジャパンカップを勝ったシュヴァルグラン(牡6)、アルアインやスワーヴリチャードといった実力のある4歳牡馬など、高水準の顔ぶれがそろう。だが、ドバイ遠征増で国内のG1が空洞化する懸念は残る。

その懸念は馬だけではなく、騎手にもある。日本馬の遠征にあわせ、今年は岩田康誠、武豊、クリストフ・ルメールという3人のトップ騎手がドバイに渡る。デビュー以来、ルメールが全レースで手綱を取り、昨年の仏・凱旋門賞(G1)にまで一緒に遠征したサトノダイヤモンドは大阪杯で乗り替わることになった。14~17年は高松宮記念(G1、中京芝1200メートル、今年は25日)とドバイ国際競走が同じ週に行われたが、多頭数となりやすい短距離戦とドバイ国際競走が重なると、一流騎手の確保は難しくなる。ドバイ国際競走と国内G1の日程が重ならないようにするなどの対策が、いずれ必要になるかもしれない。

(関根慶太郎)

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