UCC、海外まる飲み カフェ~家庭 全部任せろ

2018/3/21 6:30
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レギュラーコーヒー最大手のUCCホールディングス(HD)が海外事業を急拡大している。1月には17カ国・地域にある海外拠点の統括会社を新設。M&A(合併・買収)も駆使して、近い将来には現在3割の海外売上高比率を5割に高めたい考えだ。少子化や競合激化により国内の競争環境は厳しさが増す。本格的な味が楽しめるカフェなどコーヒーに関連した商品やサービスを複合的に提供し、「アジアトップのコーヒー会社」を目指す。

M&Aも駆使して海外展開を加速する

M&Aも駆使して海外展開を加速する

小型の焙煎(ばいせん)機を設置した店内にはコーヒー豆を煎る香ばしい香りが立ちこめる。17年12月にベトナム・ホーチミン市で開いたカフェ「UCCコーヒー ロースタリー」。店内で煎った豆で1杯ずつコーヒーをいれる本格派だ。コーヒー1杯の価格は約400円と現地では高めだが、出足は好調という。

■アジアで60店に

同様の本格的なカフェは16年から台湾でも運営しており、アジア全域ではすでに60店舗近くにまで広がっている。今後も各国・地域で出店を加速させ、5年以内には約260店まで増やしたい考えだ。

カフェだけではない。フィリピンでは現地の従業員が連日のようにスーパー巡りを続けている。カップの上に載せてレギュラーコーヒーをいれる家庭向けの簡易抽出タイプの商品を売り込むためだ。店頭では来店客らに試飲してもらい、便利さと味の良さをアピールする。同国では合弁会社の工場に簡易抽出タイプの製造ラインを導入して現地生産を始めている。

アジアでは現在も本格的なレギュラーコーヒーよりも、砂糖を多く含んだ甘いコーヒーの人気が高い。しかし、「経済が成長するにつれて、本格的なコーヒーを求める層が増えてくる。需要を先取りしたい」。1月に立ち上げた海外事業の統括会社、UCCインターナショナルの上島成介社長は意気込む。

UCCは日本ではレギュラーコーヒーや缶コーヒーを製造販売するほか、カフェの「上島珈琲店」などコーヒーに関わる事業を多面的に展開して知名度を高めてきた。アジアにも日本の「成功モデル」を持ち込み、成長を加速させる戦略だ。

M&A(合併・買収)も積極的に進める。シンガポールでは業務用コーヒーの焙煎会社、カフェなどに置く抽出マシン会社を立て続けに買収した。インドネシアでも焙煎工場と卸会社にも出資している。買収企業などには日本で培ったUCCの厳しい品質基準を導入し、販売する商品の質を高める。

アジアに加えてコーヒー先進地ともいえる欧州でも攻めに出る。UCCの海外事業拡大のきっかけになったのが12年のスイスコーヒー大手、ユナイテッドコーヒーの買収だった。

約500億円を投じたUCCとして最大規模のM&Aで、2%程度にすぎなかった海外売上高比率は一気に20%近くに上昇した。その後も旧ユナイテッドの拠点などを生かしながら、レギュラーコーヒーの販売などに力を入れている。

■国内環境厳しく

UCCが海外展開を急ぐ背景には、急速に厳しさを増している国内の事業環境がある。UCCHDの17年12月期の連結売上高は3250億円。海外売上高が増えているのに対して、全体ではほぼ横ばい状態が続いている。子会社だったギフト販売のシャディの売却なども影響しているが、主力事業の低迷も大きな要因だ。

同社が世界で初めて開発したことで知られる缶コーヒーは主力の自動販売機での需要が低迷。大手飲料メーカーとの競合も激しい。カフェチェーンもスターバックスコーヒーなどとの競合が続く。「珈琲館」ブランドで展開する約300店を5月に投資ファンドへ売却することも決めた。

「国内だけでは生き残っていけない。2030年には日本以外の売り上げを全体の中でマジョリティーにしたい」。上島成介社長の危機感は強い。

とかく「内弁慶」とも言われてきた国内食品メーカーだが、今後はUCCのように思い切って海外に踏み出す企業も増えてくるのは間違いないだろう。

とはいえ、アジアを含めて海外がすべて「バラ色」というわけではない。コーヒーについてもスイスのネスレはもちろん、UCCが得意とするレギュラーコーヒーでも最大手のオランダのジェイコブズ・ダウ・エグバーツ(JDE)などが立ちはだかる。JDEはコーヒーだけでも6000億円近い売り上げ規模を持つとされる強敵だ。

UCCは1933年創業の老舗だ。海外事業を主導することになった成介氏はUCCHD会長である上島達司氏の三男。2008年から海外事業担当の役員を務めており、12年の欧州進出以降は英国で現地法人の社長を務めた「海外通」だ。

欧米の激しい競合の現場も見ているだけに「欧米勢と同じ土俵では戦わない。消費者向け商品やカフェなど複合的な提案を通じてUCCブランドを広めていきたい」と意気込む。

一方、日本国内の缶コーヒーやレギュラーコーヒー事業を担うUCC上島珈琲の社長には次男の昌佐郎氏が就いている。同社も昨年12月には需要が伸びているペットボトル入りコーヒー飲料の新工場を70億円を投じて稼働させるなど、厳しい環境への対応を進めている。長男でグループ全体を統括するHD社長の豪太氏とともに3人が軸になって内外の難局に挑む。

(企業報道部 柴田奈々)

[日経産業新聞 2018年3月20日付]

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