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NEC・気象協会 食品需要、空から分析

気象を活用して企業の生産性を上げようと、NECと日本気象協会(東京・豊島、石川裕己会長)が組んだ。人工知能(AI)が天候や店頭販売の細かなデータを分析し、売れる量を予測してメーカーに生産すべき量を伝える。ビッグデータによる食品需要の予測について、様々な企業が関心を寄せている。

両者は2月末、食品ロスを減らす需要予測サービスを7月に始めると発表した。このサービスでは協会がノウハウを持っており、すでに食品企業と実績を積んでいる。

協会は独自に天候の情報を集めており、多様なデータを利用して2017年4月、食品需要の予測サービスを始めた。気温や湿度はもちろん、日差しや風の強さといった情報も含まれる。

天候情報に加えてツイッターの暑い、寒いなどつぶやきを計算式に入れ、独自の指数「体感温度」をはじくアルゴリズム(計算手法)を開発してサービスの基盤とした。この指数が調査会社インテージホールディングスのPOS(販売時点情報管理)データなどと、どう関係しているか分析する。

サービス開始前に豆腐メーカー大手、相模屋食料(前橋市、鳥越淳司社長)と実験した際は、指数を5段階に分け、指数ごとの生産量を決めた。協会が「6月30日の指数はレベル5」などと知らせていった結果、それだけで従来の予測に比べて生産ロスが減った。

スーパーも巻き込んだ。従来はスーパーからの発注の1日前に豆腐を見込み生産していた。この流れを改め、スーパーが協会の予測をもとに発注量を早く決定。相模屋食料は発注を受けたあとに生産できるようになり、無駄がゼロになった。

現在、森永製菓がアイスクリームの生産に協会の仕組みを取り入れている。冷菓営業部の新谷秀夫課長は「2週間先の需要予測の精度が向上する」と話す。出荷すべき量の予測データを協会から取得し、看板商品「チョコモナカジャンボ」の生産に生かす。

商品の売りはモナカのサクサク感。古くなってしまえばモナカがアイスの水分を吸い取りサクサク感は失われてしまう。

気象庁などが発表する天気予報をもとに消費量を予測していたが、2週間先は平均気温しか把握できず、冷菓の消費量に大きく影響する最高気温はわからなかった。

協会は現在、2週間先の情報を参考に配送センターがある11エリアごとに需要予測を提供している。新谷氏は「夏に向けて消費量が上がってくれば、エリアごとの需要量が分かり生産調整に生かせる」と期待する。

「気象の力で経済問題を解決できないか」。協会が新事業を模索するなか、中野俊夫工学博士のひと言で14年、商品需要予測プロジェクトが動き出したが簡単には進まなかった。本間基寛商品需要予測事業マネジャーは「長年の商慣習を破るのにとても苦労した」と語る。メーカーや小売店は昔から天候に合わせて出荷や仕入れを調整してきた。量を間違えれば大きな打撃を被る。企業は「どうせ外れるでしょう」と冷めた反応だった。

NECと提供するサービスはこうした企業の反応を覆す可能性がある。

NECと協会で予測するのも、個別の商品の最適な出荷量などの情報だ。例えば、きょうから数えて2カ月先の5月15日の店頭で、商品Aの売れ行きがどうなるか予測する。その精度は従来のメーカーの予測に比べて20%の向上が期待できると説明している。

分析対象となるデータは商品で違うが、天候情報に加えサービス利用企業の商品の生産・販売データ、地域ごとの人口、交通量といった多様なデータを組み込める。

NECは「異種混合学習技術」と呼ぶ独自のAIを使う。どんな要素が消費量などにどれくらい関係しているのか、明らかにできる特徴がある。深層学習の場合は分析過程がブラックボックスで、原因と結果のつながりは把握できない。

気温や湿度といった説明変数が、小売店やメーカーの客数や出荷量にどれくらい影響を及ぼすかわかる。いわばホワイトボックスのAIにより、小売店やメーカーが安心して予測サービスを使える効果が生まれる。

AIにどんな変数を採用するかはNECが提案する。今後、変数を機械学習により自動で組み込めるようにする計画。

NECエンタープライズビジネスユニットの中田平将理事は「バリューチェーン全体で使えば無駄を大きく削減できる」と話す。小売り、卸、メーカーが新たな仕組みでつながれば、廃棄や欠品の削減効果は大きい。

(企業報道部 毛芝雄己)

[日経産業新聞2018年3月15日付]

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