2018年7月20日(金)

自動運転、規制に影響も ウーバー初の歩行者死亡

自動運転
2018/3/20 15:04
保存
共有
印刷
その他

 米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズの自動運転車がアリゾナ州で歩行者をはね死亡させる事故を起こした。自動運転の走行実験で歩行者の死亡につながった事故は初めて。自動運転は理論上、例外的な状況に対応するデータを蓄積し学習させていけば、いつかは人間より安全な運転が可能になる。ただ、その過程でリスクが残る実験走行をどこまでの台数規模、範囲で認めるかの議論が改めて盛り上がりそうだ。

■急な飛び出しか

ウーバーテクノロジーズの自動運転車

ウーバーテクノロジーズの自動運転車

 今回の事故は18日夜10時(日本時間19日午後)ごろ、米アリゾナ州フェニックス近郊で49歳の女性が歩道から外れた車道を渡っていたところで起きた。現場の状況から荷物を積んだ自転車を押していたとみられている。事故で車体のバンパーとボンネットの一部が小さくへこんだ。車両は時速64キロメートル以下で自動走行していたとみられ、衝突直前に減速した形跡はなかった。雨や雪は降っておらず、走行が難しい気象条件でもなかった。

 米紙サンフランシスコ・クロニクルによれば、現地警察は歩行者の急な飛び出しが原因で人間の運転でも避けられなかった可能性が高いとみているという。

 アリゾナ州は道路が広く区画も規則的に配置されているため、自動運転の難易度は大都市に比べはるかに低い。さらに自動運転車への規制が全米で最も緩いため、ウーバーなど各社が積極的に走行実験を繰り返している。米グーグル系ウェイモは2017年から無人の自動運転車を走らせている。カリフォルニア州でも4月にも無人運転が解禁される予定だが、今回の死亡事故により見直しの議論も起こりそうだ。

 ウーバーは例外状況でハンドルやブレーキを操作する監督者を運転席に置く条件で実験の許可を得ている。基本的な運転の責任は運転席にいた監督者にある。ただ、事故の原因が車体(スウェーデンのボルボ・カー)や、ボルボとウーバーが共同開発するシステムのあきらかな不具合だった場合は、開発企業の責任になることもありうる。

■クレームが出るほど慎重な走り

 このため運転はかなり安全重視だ。法定速度内で走るようプログラムされており、スピード違反はありえない。基本的には常に道を譲る設定となっている。ウーバーの開発者のシーン・チン氏は、顧客を乗せた実証実験では「もっと速く走れとのクレームが出た」と語る。自動運転実験が盛んなサンフランシスコでは、路上で横入りをされ続け、交差点では道を譲り続けてなかなか動けない自動運転車をよく見かける。

 自動運転技術の安全面での評価は環境によって異なる。郊外の直線道路や専用レーンがある高速道路、運転経路が決められた狭い範囲での低速走行のような条件なら、既に安全性は人間を上回る水準まできている。多くの自動運転システムはレーザー、カメラ、超音波センサーなどを組み合わせて弱点を補い合うため人間よりも死角は少ない。長時間走っても眠くならず、スマートフォンに気を取られることもない。

 大学構内の低速バス、都市部以外のゴミ収集車や除雪車、道路清掃車などで実用化事例が増えつつある。ロサンゼルス近郊の広域自治体の都市計画を担うSCAGのディレクター、コメ・アジセ氏は「高速道路に自動運転用の専用レーンを設定していく方向」だと語る。

 ただ、人間とのやりとりが増える都心に近づくほど難易度は高く、多くの技術的課題が残る。目配せや手ぶりでやり取りができないため、人間の運転手と意思疎通できず、車線変更時に接触事故を度々起こしている。

■各社、強気の普及計画

 自動運転による産業振興を狙う米国では、既に1000台以上の実験車が走っているとみられる。州同士の規制緩和競争もあり、実験場所を見つけやすいのも追い風だ。米政府は2022年ごろに年10万台まで許可を拡大する方向で規制整備の議論を進めている。

 ウェイモは自動運転車の台数を数千台まで増やす計画。ウーバーも提携先のトヨタ自動車と自動運転システムの外販交渉をしており、現状の200台から台数を一気に増やそうとしている。現状200台前後を走らせるGMも19年以降は年2500台ずつ増やそうとしている。ただ、こうした大規模な普及計画は規制当局からの認可が前提だ。今回の事故に対する国民の反応次第では計算が狂う可能性がある。

(シリコンバレー=兼松雄一郎)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報