LGBTに優しい学校に トイレ改修、制服見直し…
性的少数者(LGBT)に配慮した学校づくりが広がってきた。男女別だけでなく誰でも使えるトイレを設けたり、制服でズボンかスカートかを選べるようにしたり。子供たちが身の回りでこうした配慮を見ることで、性的少数者への理解が自然に進むとの期待もある。

愛知県豊川市の市立一宮西部小学校は2017年3月、児童用のトイレを改修し、男子用、女子用と別に「みんなのトイレ」を設けた。廊下から前室を経て各トイレに入る設計で、廊下からは児童がどのトイレに入ったか見えない。

災害時に学校が避難所になったときなどに備え、障害者や高齢者らに使いやすくするための改修だったが、性的少数者にも配慮した。5年生の女児(11)は「みんなが使えて快適なトイレだと思う」と笑顔を見せる。

18年2月に5年生を対象にアンケートをしたところ、112人のうち100人が「みんなのトイレ」を使ったことがあると回答。これまでに平均で5回、中には「毎回、使っている」という児童もいた。「いつ使っても恥ずかしくない」「男女差を気にしなくていい」という感想が寄せられた。
柴田斉子校長は「(トイレを)目にすることで自然と性的少数者への理解が進む」と話す。主任の佐々木孝治教諭も「大人に比べて子供のほうが偏見がないので、多様性を柔軟に受け入れられるようだ」と感じている。市教委は同校以外でも、男女が共用する個室トイレを整備するなど、小学校のトイレを性的少数者に配慮した仕様に順次改修していく方針だ。
愛媛県西条市の市立丹原東中学校では16年11月、ほとんど使われていなかった障害者用トイレの入り口に生徒たちが作成した虹色のステッカーを貼り「思いやりトイレ」とした。性的少数者について学習するなかで「誰もが使いやすいトイレを設置しよう」と生徒が発案し、生徒総会で決めた。担当教員は「徐々に使う生徒が増えている」と話す。
総会では制服も取り上げた。男子は学ラン、女子はセーラー服だが、性的少数者への配慮を求める声が上がったほか「スカートは冬場に寒い」という意見も。生徒と教員による「制服改正委員会」を作り、協議を進めている。
千葉県柏市で4月に開校する市立柏の葉中学校は、性的少数者に配慮した制服を導入する。17年10月、市教委や地元小学校の関係者などによる制服の検討会で提言があった。上着はブレザーで統一し、性別を問わずネクタイかリボン、スカートかスラックスを選べる。スラックスは女性の体形を考慮したデザインにするという。
岡山大の中塚幹也教授(生殖医学)は「性的少数者といっても、同性愛や両性愛、自身の性別に違和感を持つトランスジェンダーなど様々な人がおり、ひとくくりには対応できない」と指摘する。「まずは校内に関連図書を置くなどして子供の理解を深めたうえ、一人ひとりに応じた取り組みに努めてほしい」と話している。
6割が隠して学校生活
文部科学省が2014年に公表した調査で、小中高校などを通じ任意で回答した性同一性障害の児童生徒606人のうち、43.1%が「隠している」と回答した。「ごく一部を除いて隠している」(14.3%)と合わせると6割が周囲に知られないよう学校生活を送っていた。
「親や教師に明かさず、医療機関の診断を受けていないというケースも多い」(文科省児童生徒課)という。
文科省は15年4月、児童生徒に配慮するよう学校関係者らに通知。相談を受けた際のサポートチームの設置やプライバシーへの配慮などを求めた。
具体事例として制服・トイレについての配慮のほか「児童生徒が希望する呼称を使う」「水泳は補習として別日に実施、またはリポート提出で代替する」などを掲げた。(筒井恒)