2018年12月12日(水)

福井の技術、医療に次々 異業種で手術負担軽減スーツ

2018/3/19 22:30
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福井県の地場産業を中心とする機械、繊維などの5社が連携し、新しい医療機器の開発に挑んでいる。手術する医師の体の負担を軽減するアシストスーツを2018年度中に商品化する計画だ。医療への異業種参入では眼鏡フレーム大手のシャルマン(福井県鯖江市)が手術機器を生み出した成功例がある。ものづくりの技を成長分野に生かす取り組みを福井県や大学も後押しする。

医療用アシストスーツで医師の腕が固定されるため、手先が疲れにくい(福井県永平寺町の福井大学病院)

シャルマンの医療分野の製品の中には眼鏡型の機器も誕生した

同県永平寺町の福井大学病院で6日に行われた医療用アシストスーツの実証実験。スーツを身にまとった耳鼻咽喉科の医師、扇和弘さんが手術器具を持つ手をベッドのほうに伸ばし、足でスイッチを操作すると、腕がしっかりと固定された。

これまで医療現場の手術では医師がベッドの横の台にひじをつき、手先だけを動かしていた。スーツを試した扇さんは「手術中、ずっと伸ばしている手がだいぶ楽になる」と明るい表情だ。同病院は今春にも耳鼻咽喉科の手術に使うほか、他の診療科にも拡大を探る。

■機械や繊維の技術結集

同スーツの開発を進めるのは5社の企業グループだ。福井県内に拠点を持つアシストスーツ開発のアトウン(奈良市)、省力機器のシマノ(福井県鯖江市)、繊維製造卸の米沢物産(福井市)、樹脂製品の八木熊(同)、医療機器販売のミタス(同)だ。県の工業技術センターが開発に関心を持つ企業との調整や技術支援にあたる。

きっかけは2年前。福井県が地場企業を対象に福井大病院で見学会を開いた際、ある医師が「体を保持させるスーツがほしい」と提案し、開発が始まった。シマノは「医療分野に取り組むことで、省力化機器の顧客を広げることができる」としている。

福井県は15年、産業振興指針にあたる福井経済新戦略を改訂し、医療産業への参入促進を柱の1つに掲げた。高齢化や健康志向の高まりで成長を見込める医療産業に地場産業の技術を生かし、新市場の開拓につなげるのが狙いだ。同年、産学官の連携組織「ふくいオープンイノベーション推進機構」を発足させるなどの取り組みを強化した。

既にニット生地製造の福井経編興業(福井市)が帝人、大阪医科大学(大阪府高槻市)と共同で心臓修復用のパッチの開発を進めるなど、異業種参入の動きが相次いでいる。

■眼鏡枠のシャルマン先陣

福井県が医療への異業種参入のモデルとするのが眼鏡フレーム大手のシャルマン(福井県鯖江市)だ。フレームの加工技術を生かして2012年、手術機器に参入。フレームに使う眼科用ピンセット、脳外科用のはさみといった手術機器を続々と開発してきた。

福井大学などの医師と連携し、使いやすさにこだわる。アイテム数は今や450種類以上。X線防護フレームなど眼鏡型商材も登場した。岩堀一夫取締役専務執行役員は「眼鏡の加工機械をそのまま使える。医療機器の分野に引かれて入社する人が出てきた」と話す。

県は「社員を大学の研究室に派遣するなど、現場に入り込んだ製品開発ができている」(産業労働部)と評価する。県内の眼鏡関連の約20社はシャルマンの手術器具の素材提供や部品加工に関わっている。医療分野の仕事が加わり、眼鏡産地の活性化にもつながる。

医療機器など医療産業分野における福井県内企業の出荷額は16年で89億円だった。県は20年に100億円に引き上げることを目指している。実現には、より多くの地場のメーカーの技術を生かすことが欠かせない。(福井支局長 石黒和宏)

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