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最強の相棒と北京へ アルペン男子 森井大輝

道具と技術 先導誓う

アルペン5種目すべてに出場し、銀メダル1つに終わった。5大会連続出場で5個目のメダル(銀4、銅1)を獲得したものの、またも手が届かなかった金メダル。森井大輝(トヨタ自動車)は「(金は)なかなか近くて遠い」。笑顔を見せての受け答えだったが、真の胸中はいかばかりか。

今回ほど万全の準備で臨めた大会もなかった。体調はすこぶる良い。ナショナルチームへの支援として食品メーカーからアミノ酸サプリの提供をうけ、疲労をコントロールできていた。オフのトレーニングも順調。シーズン前にはベンチプレスで過去最高の140キロを上げ、最大酸素摂取量でも最も高い数値が出た。

5種目に出場したものの、メダル1つに終わった森井=共同

用具への執心で知られる森井だが、今回は特に細やかだった。種目ごとにエッジの研ぎ方などを変えたスキー板を12セット(24本)用意した。どんな雪質、バーンにも対応するためだ。

そして最強の相棒、所属するトヨタ自動車が製作してくれたチェアスキーがあった。ミリ単位でシートの位置を調整できるようにするなど、車造りの技術の粋がてんこ盛り。森井も「自分が思ったラインに板を乗せやすくなった」と最大級の賛辞を贈っていた。

最初の滑降で「一番大事なところでミスをして」2位。「悔しいけど、形に残るものができたのでほっとした」。続くスーパー大回転ではランク上位の中の最終滑走15番目。バーンが荒れていて「自分のラインに板を置けず」8位。

雲行きが怪しくなったのは3つ目のスーパー複合だ。前半のスーパー大回転で転倒。「歯を食いしばって次のレースに備えたい」。だがその大回転は1回目で板が外れた。チェアスキーの、後ろのビンディングにはめる部分が折れた。

「これまでにない大きな力がかかったと思うが、何が原因かは判然としない」とトヨタ関係者。同じ速さを追求する乗り物とはいえ、車とチェアスキーは似て非なるものだったか。森井も「すごくへこんだ」。

そして最後の回転は1本目終了時でトップと3秒15差の5位。回転では絶望的と思える差で、その首位が2本目で転倒し、4位に。「今できる最善の滑りはできた」と話したものの、落胆の色は隠せなかった。

実は森井がシート、フレーム、サスペンションなど用具をたびたびいじることに、近しい人からも批判はある。「用具ではなく、技術を磨くべきではないか」。海外の選手は一度セッティングを決めたら、それを乗りこなせるよう練習を重ねるのが普通だからだ。

だが森井の持論は「チェアスキーはまだ確立していない。どういうものか、形をしっかりさせて、これから始めようとする人により良いものを手にしてもらいたい」。それによって障害者スポーツの底上げがしたいとの思いが根底にある。だからこそ道具の選別は念入りに。そこをおろそかにしては「今の成績は残せなかった」と、回転を終えた後で強調した。

4年後に向けては「一からマテリアルも肉体も技術も磨き上げたい」。これからも自らが実験台になる覚悟といえる。そのフロンティア精神が正しかったと証明するのが、やはり金メダルなのだろう。

(摂待卓)

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