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ネット売買の中古品、「偽物」だったら?

フリーマーケット(フリマ)アプリの登場でリユース市場が活気づくなか、偽の中古ブランド品が紛れこむトラブルも増えている。インターネット上に出品された「偽物」に、事業者や消費者はどのように対応すべきなのか。虎ノ門法律特許事務所の大熊裕司弁護士に聞いた。

中古ブランド品の取引が活況になるなか、フリマアプリに関する相談が増えている

国民生活センターによると、同センターへのフリマアプリに関する相談件数は、5年前に比べて約20倍に増えているという。2017年度は1月末までに3330件と、前年度同時期(2060件)に比べて6割以上多い。「偽物だったのに返品に応じてもらえない」という購入者や、出品者からも「偽造品だと言われ、代金が支払われない」などの相談があるという。

――偽物について法律の定義を教えてください。

「偽物には2種類ある。1つ目はグッチやルイ・ヴィトンなどブランドの象徴的なマーク(商標)を商品に引用して販売した場合だ。例えば、今までに見たことのない形状の商品であっても『あ、これはグッチだ』と判別できれば、商標法違反となる」

「2つ目は形に注目した偽物だ。ルイ・ヴィトンのバッグの形に似せる『形態模倣』と呼ばれる行為は、不正競争防止法に抵触する」

――偽物が出品された場合、ネットモールの運営側にも責任はあるのですか。

「模倣品が出品された際、モール運営元にも責任が生じ得ることを認めた判例がある。商品固有の商標を無断使用したグッズがネット販売され、取引の場を提供したネットモールの運営元に対して商標権侵害の責任を負うかが争われたもので、知的財産高裁は『放置すれば運営元にも責任が生じる』との判断を下した」

「原告はキャンディーのチュッパチャプスの商標を管理するイタリアの企業だった。ロゴが無断使用されたグッズがネットモール『楽天市場』で売られているとして賠償などを楽天に求めた。楽天は商標権者の指摘後に同ページを削除する対応をとったため『合理的期間内に問題を是正したと認められる』として賠償責任は認めなかった。つまり運営側が一定の対応を怠らなければ責任は免れる」

――利用者が偽物を購入した場合、モール運営側にも責任を問えるのですか。

「それは難しい。ネットモールには何十万点の商品が出品されているので、運営側が全てをチェックするのは困難だ。サイト利用に関して、あらかじめ売買トラブルは免責事項になっていることも多い」

「仮に商品の検品を徹底したとしても、ネットに公開された画像だけで真贋(しんがん)は分からない。実際に被害が分かるのは商品が手元に届いてからで、まずは購入元に問い合わせることが必要だ」

――偽ブランド品だと分かった場合、売り手から返金してもらえるのでしょうか。

「ネット通販で事業者から購入した場合、一定のキャンセル期間を設けた『クーリングオフ』は適用されない。しかし事業者側は今後のネット上の『評価』を気にして返品に対応するケースは多々ある」

「だが、事業者が意図的に偽ブランド品を大量に扱っていた場合は、商標法違反などから処罰の対象になる可能性が高い。これはネットに限らず、どこかの軒先や露天商で売買している店も同じだ」

――個人間での取引ではどうですか。

「事業としてやっていない個人は、商標法などは適用されない。詐欺罪や契約不履行などを根拠に解除要求はできる。中古品によくある『ノークレーム・ノーリターン(苦情・返品は受け付けない)特約』を明記する出品者が増えているが、全ての案件で成立するわけではない。的確な情報を伝えていなかった場合などは無効となる。もちろん偽ブランドの場合も同様だ」

――それでも返金に応じてもらえない場合は。

「出品者が『偽物』と認めない場合は、裁判を起こすしかない。詐欺罪などで訴える場合、刑事訴訟と民事訴訟の両方が考えられる。刑事訴訟の場合は警察に被害届を出すことになる。捜査の主導権は警察が持つため、すぐに業者に事情聴取するかは分からない。民事訴訟なら自分のペースで裁判ができる」

「ただ、裁判に勝ったとしても割に合うかは難しいところだ。仮に10万円で購入した偽ブランドバッグの返金を求めて訴えたとすると、弁護士を雇う費用など裁判費用は平均で30万円以上になる。期間も半年以上かかる。訴えを起こした当事者側が偽物であることを証明しなければならない。警察も大量の被害件数や何百万円という被害額が出ていないと動きにくい。『偽物』と知りつつ販売したのかという詐欺罪の立証には時間と労力がかかるためだ」

――偽ブランド品を購入しないための注意点は。

「これは法律論ではないが、取引履歴など出品者情報の確認をすべきだ。何度も出品実績があれば、最低限の安心材料となる。一方で個人の販売サイトの商品は判断は難しく、購入は自己責任とも言える。ネットに限らず、中古の安い商品の購入はリスクを伴う」

――そもそも中古品売買は、著作権などを侵害していないのですか。

「知的財産権を守る著作権法や商標法などの条文には中古品売買に関する規制は設けられていない。ただし、営利目的でリユース品を扱う事業者は古物営業法に基づいて許可を得なければならない。盗難品の売買を防ぐためで、市場に流れてしまった場合でも発見できるよう、売り主の本人確認を必須としたり、買い取り場所を限定したりと細かい規定を設けている」

――海外で偽ブランド品を土産に買う人がいます。

「偽物だと分かっていて国内に持ち込むのは、関税法違反だ。ただ個人としてなので、刑罰というより見つかっても廃棄して終わりという程度だ。偽ブランド品を売る人は処罰され、基本的に買う人・持つ人の処罰規定は設けられていない。ただし『本物』として転売するなら、個人でも詐欺罪などに問われる可能性はある」

(聞き手は企業報道部 沖永翔也)

[日経産業新聞2018年3月16日付]

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