2018年9月19日(水)

グーグルは14社 AIスタートアップ争奪戦が白熱

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2018/3/19 2:00
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CBINSIGHTS

 グローバル企業にとって人工知能(AI)をどう経営に生かすかが重要な課題だ。自社の既存の資産に新たな価値を与えたり、まったく新しい事業分野に進出したり、と活用方法は様々。とりわけ機動的に新しい領域を切り開くAIスタートアップを巡る買収が増えている。「第3次AIブーム」と言われる今、米グーグル、米アップルなどのグローバル企業はどのよう投資活動に動いているのだろうか。米CBインサイツのリポートの日本語版をお届けする。

 小売りから農業に至るあらゆる業界の大企業が、自社製品にAIの機械学習を活用しようとしている。一方、AI分野の人材不足は深刻だ。

 こうした要因が重なり、有力なAI関連スタートアップの獲得競争が起きている。買収対象のスタートアップは、研究も資金調達もまだ初期の段階にあることが多い。

■120社中115社が買収される

 2017年に初めてエグジット(投資資金の回収)を果たしたAIスタートアップは120社弱で、このうち115社が買収された。17年のAIスタートアップの買収件数は前年比で44%増えた。

 18年のスタートアップの買収件数はすでに8件に上っている。米アマゾン・ドット・コムはAIサイバーセキュリティーの米Sqrrl(スクアラル)を買収。米オラクルもサイバーセキュリティーの米Zenedge(ゼネッジ)を取得した。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しました。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するレポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載します。

 AIスタートアップの獲得を狙うのは大手IT(情報技術)企業だけではない。保険や小売り、ヘルスケアといった旧来業種の企業も買収をもくろんでいる。

 スイスの製薬大手ロシュは18年2月、米ニューヨークに拠点を置くヘルスケアのFlatiron Health(フラティロン・ヘルス)を19億ドル(約2010億円)で買収した。AI分野のM&A(合併・買収)としては過去最大級だった。

 このほか、AIスタートアップのエグジットが10億ドル(公表ベース)を超えたのは、米フォード・モーターが17年に自動運転技術の米Argo AI(アルゴAI)を買収したケースだけだ。

 AIスタートアップを最も多く買収しているのは米グーグルで、14社を傘下に収めている。ここでは機械学習コンペを開催するデータサイエンスコミュニティーの米Kaggle(カグル)を除く。

 下記のタイムラインは10年以降に4社以上のスタートアップを買収した企業のM&A活動を示している。なお、米アップルによる英Novauris Technoligies(ノバウリス・テクノロジーズ)の買収日と、アマゾンによる米Orbeus(オーベウス)の買収日は不明のため、推定日を示している。

■アップルによる買収、再び活発に

 グーグルは13年、カナダのトロント大学コンピューターサイエンス学部からDNNリサーチを取得した。これにより、グーグルの画像検索機能は大きく進歩したとされる。14年には英ディープマインド・テクノロジーズを約6億ドルで買収(グーグルのディープマインド部門は最近、囲碁のトップ棋士を破った)。最近では、会話型の商取引プラットフォーム、米Banter(バンター)も獲得した。自然言語処理の分野では16年に米API.aiも買収し、音声認識ができるAIアシスタント「グーグルアシスタント」の機能として活用している。

 アップルの買収件数は13件でグーグルに迫る。アップルはAIスタートアップ買収の先駆けで、10年に米Siri(シリ)を買収し、AIアシスタントの実用化を果たした。ちなみに、アマゾンのAIアシスタント「アレクサ」には、同社が13年に買収した英Evi Technorogies(イーヴィー・テクノロジーズ)の技術が使われている。

 シリの買収後、アップルのM&A活動は数年間低調だったが、16年以降に再び活発化した。アップルは買収したAIスタートアップの活用法を明かさないことが多い。最新の買収案件は米Pop Up Archive(ポップアップ・アーカイブ)で、「iTunes」の機能に加えられる可能性がある。ポップアップは買収される前に音声ファイルの検索・整理ツールの開発を手がけ、機械学習を使って音声を文書に転写し、転写に伴うエラーの修正作業をクラウドソーシングしていた。

 上記の表では大手IT企業によるM&Aが大半を占めているが、ソーシャルメディアの監視を手掛けるノルウェーのMeltwater Group(メルトウオーターグループ)は例外だ。同社は表の中で唯一の未上場企業だ。

 メルトウオーターはAIを戦略的に使ってデジタルメディアを監視し、自社ブランドへの評価やライバル社の行動を分析するサービスを提供している。

2012~17年に買収されたAIスタートアップ
会社名買 収
された日
Harvest.ai(ハーベスト.ai)2017/1/9
Angel.ai(エンジェル.ai)2016/9/20
Orbeus(オーベウス)2015/10/1
Evi Technologies(イーヴィーテクノロジーズ)2013/4/17
Sqrrl(スクアラル)2018/1/23
Siri(シリ)2010/4/9
SensoMotoric(センソモトリック)ドイツ2017/6/27
Regaind(リゲインド)フランス2017/9/29
Init.ai(イニット.ai)2017/10/5
Pop Up Archive(ポップアップ・アーカイブ)2017/12/5
Lattice(ラティス)2017/5/15
Real Face(リアルフェース)イスラエル2017/2/20
tuplejump(トゥープルジャンプ)インド2016/9/22
Turi(トゥリ)2016/8/5
Emotient(エモティエント)2016/1/7
Perceptio(パーセプティオ)2015/10/6
Vocal IQ(ボーカルIQ)2015/10/2
Novauris Technologies(ノバウリス・テクノロジーズ)2014/4/3
Ozlo(オズロ)2017/7/31
Zurich Eye(チューリッヒ・アイ)スイス2016/11/10
Masquerade Technologies(マスケラード・テクノロジーズ)ベラルーシ2016/3/9
Wit.ai(ウイット.ai)2015/1/5
Mobile Technologies(モバイル・テクノロジーズ)2013/8/13
Face.com(フェース・ドットコム)2012/5/29
AIMatter(AIマター)ベラルーシ2017/8/16
Banter(バンター)2017/11/1
Halli Labs(ハリラボ)インド2017/7/12
Api.ai2016/9/19
Moodstocks(ムードストックス)フランス2016/7/6
Timeful(タイムフル)2015/5/4
Granata Decision Systems(グラナタ・デシジョン・システムズ)カナダ2015/1/23
Jetpac(ジェットパック)2014/8/16
Emu(エミュ)2014/8/6
DeepMind Technologies(ディープマインド・テクノロジーズ)2014/1/27
DNNresearch(DNNリサーチ)カナダ2013/3/13
CleverSense(クレバーセンス)2011/12/14
Vision Factory(ビジョン・ファクトリー)2014/10/23
Dark Blue Labs(ダーク・ブルー・ラボ)2014/10/23
Movidius(モビディアス)2016/9/6
Nervana Systems(ナーバナ・システムズ)2016/8/9
Itseez(イトシーズ)2016/5/27
Saffron Technology(サフロン・テクノロジー)2015/10/26
Indisys(インディシス)スペイン2013/9/13
Cosmify(コズミファイ)2017/8/15
Algo(アルゴ)ノルウェー2017/8/29
Wrapidity(ラピディティ)2017/2/21
Encore Alert(アンコア・アラート)2016/3/29
OCULUSai(オキュラスai)スウェーデン2013/3/18
Maluuba(マルーバ)カナダ2017/1/13
Genee(ジニー)2016/8/22
SwiftKey(スウィフトキー)2016/2/19
Equivio(イクイビオ)イスラエル2015/1/20
Netbreeze(ネットブリーズ)スイス2013/3/20
MetaMind(メタマインド)2016/4/4
PredictionIO(プレディクションIO)2016/2/19
MinHash(ミンハッシュ)2015/12/14
Tempo AI(テンポAI)2015/5/29
Magic Pony(マジック・ポニー)2016/6/20
Whetlab(ウエットラボ)2015/6/17
TellApart(テルアパート)2015/4/28
Madbits(マッドビッツ)2014/7/30

注:CleverSenceの買収は2011年

 下記は最新のデータである17年7月時点のタイムライン(時系列表)だ。前者のタイムラインでは、AIスタートアップを2社以上買収した全ての企業が示されている。

 16年10月時点でのタイムラインは下記の通りだ。

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